「シン〜♪」



「わっ!!!?」




食堂で昼食を摂るシンに背後から飛び付いた


突然の襲撃に驚いたシンは持っていたフォークをカシャンと落としてしまう。




「びっくりした?」


「そりゃ驚きますよ!!」



16歳男子が背後から急に女の子に抱き付かれて動じない筈が無い。


しかも相手は憧れのエースパイロットで先輩でもあるだ。











「軍人ともあろうものが、簡単に背後を取られてちゃダメよ?」


「…っ…」



耳元で囁かれる愛らしい声に、シンは耳まで真っ赤になる。



「と…とにかく!俺食事中なんですからっ!!」




















彼女があいつに構う理由





















「全く…どこへ行ったんだ?」






貴重な休憩時間を恋人であると過ごそうと思ったアスラン。


しかし、肝心のの姿が見当たらない。



思い当たる場所は全て探したつもりだが…。



広い艦内とはいえ、行き先にも限度がある訳で…








「ねぇシン。最近と怪しくない?」






ラウンジを通り掛ったアスランの耳は『』という単語に反応する。



「え?」


「だって…ってば何かとシンの事構うじゃない?」


「俺の事好きなのかも…。」



な…!!


シンの大胆な発言にアスランは思わず立ち止まった。


それと同時にルナマリアが吹き出した。



「あははっ!あり得ないわよ!」


「…何でそう思うんだよ…。」


ムスッとした表情でシンが返す。


「だって…の恋人と言えばあのアスランさんよ?
あの人からシンに乗り換えるなんて考えられないわよ。」






アスランとのカップルと言えば…

ミネルバ艦内でも一際有名な存在。



ラクスという婚約者が居るという噂も気にせず、アスランの溺愛っぷりは有名で。



だから2人の破局なんて普通は考えられない。








「そんなの…分かんないじゃん。
あの人、ラクス・クラインって婚約者が居るんだろ?
いつ飽きられてもおかしくないよ。
少なくとも、俺だったらそんな中途半端な事はしないね。」




に憧れる一人の男として、アスランは気に入らない存在。


婚約者がいながら恋人が居て…



そんな状態を何とも思わないのだろうか…。




「そりゃ…不思議だなぁ…とは思うけど。」


「だろ?いつ壊れてもおかしくない関係なんだって。
俺の時代ももうすぐかな♪」



「もしそれでシンを選ぶんだったら…相当変わった趣味ね。」




















「はぁ…」



さっきの会話を一部始終聞いてしまったアスラン。


を探す気力を失い、自室へと戻っていた。



ベッドに身を投げ、天井を仰ぎながら何度も溜息をつく。






周りからはそんな風に見られていたのか…。


そりゃ…プラント内では未だ俺とラクスは婚約関係にあると信じ込まれていて…。


でも、プラントに居る彼女はラクスではないし…

だってその事はちゃんと理解してくれている筈。



だから、俺は艦内でとの関係を隠したりしなかったし…。


そうする事で、他の男に牽制をかけているつもりだったのに。











確かに、はシンがお気に入りだ。


ミネルバ配属になって以来、何かとシンを構っている。


…一応、俺はシンの上官に当たる訳で…


「何でシンに構うんだ?」


そんな事をに聞くのも何だか格好悪いし…。



嫉妬してるなんて思われたくないんだよ…。


好きな女の子の前では理想の恋人で居たい。


男としてそう思うのは当然だろ?




でも、さすがにさっきのセリフは堪えたな…。



『俺の時代ももうすぐかな♪』


冗談じゃない。






















「アスラン、居る?」


暫くしてアスランの部屋に訪れた


「居るよ。」



一言返すと、すぐにドアが開く。


ひょっこりと顔を出したは、嬉しそうに中へと足を踏み入れた。






「…もしかして疲れてる?」



ベッドで横になっていたアスランを心配したは、ドアの前で遠慮がちに聞いた。



「いや。大丈夫だよ。」



に心配掛けまいと、アスランは体を起こしてベッドに腰掛けた。



、おいで?」


ベッドをポンポンと叩いて手招きすると、は嬉しそうに駆け寄って来た。




こんな仕草が可愛くて堪らないんだ…。




アスランの隣に腰を下ろしたは、ギュッとアスランの腕にしがみ付く。









「ずっと艦内探してたのに…。部屋に居たんだね。」


「俺の事…探してたのか?」


「うん。休憩時間、一緒に過ごしたかったんだもん。」



「シンじゃなくて…?」


「え…?何でそこでシンの名前が出て来るの?」



アスランの意外な発言に、はきょとんと目を丸める。




「噂になってるぞ?最近とシンが怪しいって。」


「はい?」






何でそんな話になってるのか…にもさっぱり分からない。



「良くシンの事構ってるだろ?」


「あぁ…そう言えば…」


「シンの事、気に入ってるのか?」




「気に入ってるって言うか…似てるんだよね。妹に。」



「は…?」





妹…?


「弟じゃなくて?…ってか、って妹居たのか?」



「うん。3つ下なんだけどね、生意気ですっごく可愛いの〜v」


何故か頬を染めながら語る


「何かね、シン見てると妹思い出すのよ。
反応とかもすっごく似てて…だからつい構っちゃうのかなぁ…?」





「くっ…はは…。」


「え?私、何か可笑しい事言った?」



アスランにしては珍しく…声を上げて笑い始める。



「いや…何でもない…。」



異性として見ている所か…女の子扱い…


安心したのと同時に、そんなシンが逆に可哀想に思えて来て…。




って…罪な女の子だよな…。」


「え?何でよ…?」





の腰に手を回し、額にキスを落とす。



「そんなが好きだよ。」


「な…何言ってるのよ急に…。」



頬を真っ赤に染めたは、アスランの告白に戸惑う。


そんなの唇を捕らえたアスランは、何度ものそれに口付けを落とした。












の真意が分かったアスランは酷くご機嫌で…


その後、は前と変わらずシンを構い続けるのだけれど、
癪に感じる所か、その光景が可笑しくて笑いを堪えるのに必死だった。

























【あとがき】

最近アスシンが大好きな梨惟菜でございます。

シンに嫉妬するアスラン…書いてて楽しかったです。

最近その手のリクが結構多く…

そろそろネタ切れしそうで心臓バクバクです。

使い回しになっていなければ良いのですが…。


さて…

今回はシンが弟ではなく妹扱いでした。

む…惨い…


いや、ウチの妹がですね、すっごく生意気で可愛いんですよ〜。

それこそシンの様に♪

そこらのナヨナヨした男の子よりもずっと男前だと思います。

なので、ヒロインの妹はウチの妹がモデルだったりして…。


はっ…ご…ゴメンナサイ!妹様!!

実は妹に頭の上がらない姉でした。



ユエ様、いかがでしたでしょうか?

また感想いただけましたら嬉しいです。






2005.5.7 梨惟菜








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