「ハロの作り方?」



「あぁ…別にハロじゃなくても良いんだ。要するに、電子工作を教えて欲しいんだよ。」





ある穏やかな日の午後の事だった。


今日は特に仕事もなければ規定の訓練も済ませた。



特にする事の無かったアスランは自室で休もうとしていた所を、ハイネに呼び止められる。






「電子工作…を?」



「俺、その手の分野って全く知らなくてさ。」



「じゃあ何で…」


「好きなんだろ?女の子って。そういうの。」




















  理想論
























「ダメだ。俺には無理!!」



指導を始めて20分。


ハイネは持っていた工具を早くもベッドに投げた。




「…本気で作りたいと思ってるのか?」



せっかく時間を割いてまで教えているというのに、肝心の生徒はやる気ゼロ。


まるでかつての親友のような反応に少し不機嫌になった。



決して懐かしいとは思わないのだ…。


マイクロユニット製作に関しては苦い思い出が沢山ある。


自分は得意分野なのに、いつも苦手な親友の手伝いで期限ギリギリまで苦労させられた経験が多数。






得意分野なだけに、何故コレが苦手なのかが分からないのだ。








「あ〜。作りたいとは思ったんだけどな、よく考えたら俺、手先不器用だった。」


「はぁ…」



それは…何となく見ていたら分かったけど…


ハッキリ言って、このペースだと何ヶ月掛かるか分からない勢いだ。



早めに諦めてくれるならその方が有難い。











「じゃあ…どうするんだ?のプレゼント。」


「そうなんだよなぁ…。」









ハイネがアスランを訪ねた理由はコレだった。



つい先日、2年越しの片想いを実らせたハイネ。



艦内でもちょっとしたホットなカップルとして有名だった。


何と言っても、今までしつこい程にシンが言い寄っていたをゲットしたのだ。



シンが怖くて誰もが近付けなかった、ミネルバの隠れたアイドル。





決して交際宣言をした訳では無いが、一目瞭然。




シンがに言い寄らなくなっただけで大騒ぎなのに…


の呼び方が

『ヴェステンフルス隊長』から『ハイネ』に変わってる。




シンの2年越しの片想い(?)は見事に散ったのだ。







で…


間もなくやって来るの誕生日。


ハイネはその誕生日にペットロボを作ってプレゼントしようとしていたのだ。









「まぁ…全ての女の子がペットロボ好きとは限らないし…。」



…と言うか、あんまり居ない気もする…。



「でも、お前がプレゼントするって言ったらソレだろ?」



「…あぁ…まぁ…。」



何と言うか…自分にはコレくらいしか無いし…。


特技を生かすのも悪くないかな…と思って作ってみたら意外に反応が良かったから…。






「その…別に物をあげなくてもいいんじゃないか?」



「じゃあ例えば…?」





「…一日何でも言う事聞いてやる…とか?」


「あぁ…成る程…。でもなぁ…」



ある意味手っ取り早いかもしれない。


当たり外れのあるプレゼントを用意するよりは…。



「でも…?」



「やっぱ…気に入って貰えるような誕生日を演出してやりたくないか?」


ハイネの理想論。


『男は常に女に喜ばれる存在であれ』



「俺は…そうは思わないけど…。」





あぁ…そうか…


根本的に俺達は恋愛に対する価値観が違うのか…





「まぁ…この際仕方ないよな…。一応、戦争中な訳だし…。
 彼女の誕生日だから…って上陸許可貰うのもどうかと思うしな…。」




フェイスの権限を利用すればごく簡単な事ではあるのだが…


こんな所で権力を発揮するのもカッコ悪いと思うのだ。



結果的にの要望に応えて喜んで貰えば…同じか。





「よし!そうしよう!」


「は?」



ハイネは張り切って部屋を飛び出した。























「…誕生日にして欲しい事?」



「そう。こんな状況だからまともなプレゼントも用意してやれないし…。
 だから、誕生日当日はの言う事、何でも聞いてやるよ。」



「急に言われても…」



「まぁ、まだ日はあるし…ゆっくり考えてくれればいいから。」



「あ…はい…。」
















ハイネと付き合って初めての誕生日…。


仮にも戦時中だし…って半ば諦めてたんだけど…。



ハイネからの突然の申し出に正直嬉しくて。



私は周囲に人が居ないのを良い事に、部屋までスキップをして帰る。











「…何か良い事あったわね?」



「へ?」



部屋に入るなり、同室のルナマリアが察知した。



「顔、にやけてるわよ?」


「え!?嘘!!」



は慌てて緩んだ頬を両手で押さえる。



「で?何があったの?」


「…ハイネが…誕生日に何でも言う事聞いてくれるって。」


「嘘っ!素敵〜☆」



「でも…そう言われると逆に困っちゃうよ。」



「あら…この際だから婚約して貰っちゃえば?」


「はぁ!?」



「何でも聞いてくれるんでしょ?チャンスじゃない。
 フェイスのエリートと婚約…これで将来も安泰よ?」



いくらなんでも…自分の誕生日に婚約迫る彼女ってどうよ?


私の理想論…




『女は男の前には出るな。常に後ろに付いて歩むべし』



まぁ…ルナマリアは逆の意見みたいなんだけどね。



「そうだ!」


「何?」


「素敵な事、思いついちゃった♪」





















「わ!カッコいい!!」


「そ…そうか?」



俺としてはそのの格好の方が可愛いと思うけど…。






誕生日当日…。


が出した『お願い』とは…




『今日一日、お互いに私服で過ごしたい。』との事。




まぁ…今日は予め非番の予定ではあったし…。


2人きりでのディナーを楽しむ為に、少し時間をずらして食堂を貸し切りにして貰える事になった。




つまり今日は、『私服で一日艦内デート』なのだ。














周囲の羨む目を他所に、2人は誕生日を楽しんだ。






「ごめんな。本当は上陸許可でも貰って外でデート出来たら良かったんだけど。」



「ううん。全然平気だよ。凄く楽しかったし…。ハイネの私服も見れたしね。」



ちょっと遅めのディナータイム。


貸し切った食堂は2人だけしか居なくて…。


キャンドルに灯された明かりが雰囲気を演出する。



今日の為にシェフに特別にお願いしていたメニューはの好きな物ばかり。



も終始笑顔でそれを頬張る。












「美味しかった。ご馳走様。」



デザートも食べ終え、ナプキンをテーブルの端に置いたは満面の笑みを浮かべた。





…コレ。」



タイミングを見計らったハイネは小さな小箱を目の前に置く。




「…え…?」


予想外の展開には目を見開いた。




プレゼント…用意してやれないって言ってたのに…。





「俺としてはやっぱりプレゼントはしたかったんだよな。
 気に入って貰えるか分かんないけど…貰ってくれると嬉しい。」



「そんな…嬉しいに決まってるよ!…開けてもいい?」



「勿論。」





丁寧に包装紙を開けると…小箱から出て来たのは小さな石の付いた指輪。



「…っ…コレ!」


「俺と…婚約して貰えませんか?嬢。」


「…でも…!私でいいの!?」



「あのなぁ…。俺だって2年も片想いしてたんだぜ?これ以上の女なんて居るかよ。」


「…嬉しい…。」




涙目で微笑むの手から指輪を取ったハイネは、そっと薬指にそれを通した。




「じゃ、戦争が終わったらプラントで派手に挙式…だな。」



「…はい。」











『男は常に女に喜ばれる存在であれ』

『女は男の前には出るな。常に後ろに付いて歩むべし』




これが2人の理想論。

















【あとがき】

えぇと…最初に書いた『理想論』はすぐに撤去してしまいましたので…。

だいぶ違う作品になってしまいました。

今回、とても貴重なご意見を頂きまして…

私自身、改めて反省致しました。

一応、初めて書いたハイネ夢『憧れの君』の続編という形になりましたが…。

紅華様、いかがでしたでしょう?

またご意見ありましたら何でも言って下さい。







2005.6.5 梨惟菜











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