おやすみ



















?どうした?」






部屋の扉の前で立ち往生するを見掛けたディアッカが声を掛ける。




「あ…うん…。」



その部屋はイザークの部屋で…



はイザークの恋人であって、何も気兼ねするような関係では無いと思うのだが…。







「イザーク、居ないのか?」



「ううん。居るんだけどさ、最近疲れてるみたいだから…。」







隊長として隊や艦を任される様な立場になってどれくらいが経つだろうか…



誰もが当たり前と思っているその地位…




でも、それが容易な事では無い事は十分分かってる。



でも、イザークは決して弱みを見せる人では無いし…



だから誰も気付かない。












「ね…ちょっと話し相手になってよ。」



「え?俺?」



「どうせ暇なんでしょ?」




「失礼な奴だな…。」






結局、の言う通りではあるのだけれど。



に腕を引かれ、2人はラウンジへと歩き始めた。





















「最近あんまり一緒に居ないよな…お前ら。」




「そう?」




「まぁ…イザークは忙しいしな。」






付き合い始めた時には共に赤を着ていた。



立場も平等で…上下の差は無くて…



でも今は違うから…。











隊長って立場もあるから…多少なりとも人目は気にしなくちゃいけないだろうし。




そう思うと…今までの2人ではいられなくて…。





同じ艦内に居るのになかなか会えなくて…でも会いたくて…




何でか、時々無性に泣きなくなる時があった。





















「やっぱちょっとだけ見て来る。」




立ち上がり、フワリと空中で体を反転させる。




「あぁ。たまにはイチャイチャして来いって。」





「イザークがそんな事するキャラだと思う?」




「…だな。」




















イザークの部屋のコードは知っている。




いつでも気兼ねせずに入っていいから…って言われ、教えてもらった。




それでも一応は了解を取るべきだと思って、いつもはインターホンを鳴らす。




それも今日はやめておく事にした。









手早くコードを打ち込んで…部屋の中へと入る。










薄暗い部屋…



普段、部屋を訪れると大抵彼は机に向かっていて…



パソコンを触っているか…書類に目を通しているか…




でも今日は机のライトも落とされている。






久し振りの非番だもんね…




それでも緊急事態になればすぐに飛び起きて…



休める時間は思っている以上に少ないと思う。












椅子に掛けられた白い上着…



何も掛けずに…ベッドで横になるイザーク…




珍しく、深い眠りに就いてるみたい。











傍らに置かれた毛布をそっと掛けて…ベッドサイドに腰を下ろした。







綺麗な銀糸がサラサラと揺れて…閉じた睫の長さに思わず魅入っていた。









「ん…」




髪に触れていた手を…慌てて引く。




「……?」




「ごめん…起こしちゃった…?」






「いや…悪い。気付かなかった。」




「気にしないで…ちょっと顔見に来ただけだからさ。」




邪魔をしないように…立ち去ろうとした所をイザークの手によって阻まれた。





「…イザーク?」



そのまま…ゆっくりと体を起こしたイザークが頬に不意打ちのキスを落とす。





「…何?どうしたの…?」




こんな風に触れられる事は珍しくて…はただ驚く。





「やっぱり疲れてるんじゃない?もう少し休んだら?」




「いや…十分休んだ。」




そのまま腕を背中に回したイザークは、を抱き寄せる。





やっぱりいつものイザークとは違っていて…戸惑いが隠せない。




「あまり一緒に居てやれないからな。」



「…仕方ないよ。隊長なんだもん。忙しいのは十分分かってる。」





いつもと違う仕草に戸惑いながらも…久し振りの2人きりの時間が心地よくて…




自らの手も…イザークの背中へと回す。













疲れてる証拠…


いつもは気丈に振舞うイザークが…こうして優しく触れてくれて…

















「…え…?ちょっ…イザーク…?」





抱き締められていた腕の強さが弱まって…



今度は逆に、イザーク自身の重みを感じる…










ドサッ…









気が付けば目の前には天井があって…



そこで初めて、押し倒されている事に気が付いた。







「…イ…イザーク!」




「悪い…少しだけ…休ませてくれ…」




「え…?」




それだけ言うと…イザークは耳元で寝息を立て始めた。




ホント…疲れてるならそう言えばいいのに…。



変な所で意地っ張りなんだから…。

















「……」








「…?…寝言…?」






頬を掠める銀糸がくすぐったくて…寝息を立てているイザークに愛しさを感じて…




こんな風に寝ちゃうイザーク…初めてだから…









「…って…」




イザークが起きるまでこのままなの…?




イザークに押し倒された状態で…抱き締められたままじゃ動くに動けないし…




耳元ではイザークの寝息がリアルに聞こえて来るし…。







「だ…誰か助けて…」






の心の叫びは誰にも届かず…



甘えるように縋り付かれたままの状態で約2時間…





















「ん…」




「…やっとお目覚めですか…」




…?お前、何でここに…」




「覚えてないんだ…。」




「俺はどのくらい寝ていた?今何時だ?」




「2時間。今は夕方の6時。」








「…寝過ぎたな…まだ片付いていない書類があった…。」





ようやく体を起こしたイザーク…



が、またを腕の中に収める。





「ちょっと!書類が残ってるんじゃなかったの!?」






「…少しくらい遅れても構わん。」





やっぱりまだ…目がハッキリと開いて無い…



「イザ…寝惚けてる!?」



「あぁ…そうかもしれんな…。」




そう言ったイザークが次に起こした行動は…




「たまにはこうして見上げるのも悪くはないな…。」




の膝を枕にしたイザークは…微笑みながら見上げる。






「…っ…イザークっ!!」
























【あとがき】

甘えるイザーク…

甘え方が何だか微妙で申し訳ないです。

難しかったぁ…(汗)

きっとこんなの甘えてない〜って思われても仕方ない仕上がり…

アイズ様、お待たせしてしまって済みませんでしたぁ。







2005.9.3 梨惟菜












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