「…私…秋って嫌いなのよね…。」
ポツリと呟くに視線を向けたが…
踊る落ち葉の風に隠されて…その表情は伺えない。
まだ10月半ばだというのに、妙に肌寒い日が続いて…
今年は早くも黄色く染まった葉が落ち始めていた。
「何か嫌な思い出でもあるのか?」
俺がそう問うと、彼女は『う〜ん』と唸りながら口を開く。
「誕生日があるから…。」
「…は…?」
予想外の返事に、俺は首を傾げた。
何故…誕生日があると秋が嫌いになるのか、さっぱり分からない。
付き合って3度目の秋になるのに、そんな話を耳にしたのは初めてだった。
「誕生日…嫌いなのか?」
初めて一緒に過ごした誕生日も…2回目の時も…そんな様子は無かったように思うけれど。
けれど、からの返事は返って来ない。
そんな事を思うようになったのは最近の話ではない。
アスランと付き合い始めた頃から、そう思ってた。
アスランの誕生日はC.E.56の10月29日。
私の誕生日はその翌年、C.E.57の10月28日。
そう…日付だけ見れば、一日違いの誕生日。
初めてその事実を知った時には、運命かも!?って純粋に喜んだり…。
でもね…
私がアスランより1つ年下じゃなかったら…もっと嬉しかったんだけどな…って思ったの。
「私がアスランと同い年になれるの、24時間の間だけなんだもん。」
そう…
10月28日の自分の誕生日だけ…
その日だけ、私はアスランと同い年になれるの。
でも、次の日にはまたアスランが年上になっちゃう…。
たった一日だけだよ!?
それが嫌で堪らない…。
365日の内、364日は年上の彼…。
「何だ…そういう事だったのか。」
「…どうせ下らない…って思ったんデショ。」
「…いや?可愛いと思うけど?」
に言われるまで…全然考えた事も無かった。
「でも、そう考えると俺達、同い年でもおかしくないよな?」
「は?何で?」
「俺が生まれて1年以内にが生まれて来てるんだから。」
「それは…アスランの誕生日を基準に考えてるから…でしょ?」
「そうなんだけどね…。俺の世界は中心に回ってるから良いんだよ。」
そう言われると悪い気はしない。
恋人に、自分中心に回ってるなんて言われたら…最高の惚気だって思うでしょう?
「だから…アスランの誕生日は嫌い。」
「ちょっと待ってくれ…何で俺の誕生日なんだよ…」
「う〜ん…。やっぱり好きかも?」
「…どっちだよ…」
コロコロと表情を変えながら悩むが可愛いと思うのは、惚れた弱みってやつかな?
「うん。やっぱりアスランが生まれて来てくれた大事な日だから好き。」
はニッコリと微笑むと…フワリと俺の腕の中に入り込んで来た。
腕の中にピッタリと収まってしまう、小柄なは抱き心地が良い。
「…アスラン…好きよ?」
「どうしたんだ?急に…。」
「だから、今年も一緒にお祝いしようね。」
「当たり前だろ?…って言うより、これから先もずっと…な。」
俺達にとって一番大事な日なんだから…。
「そうだ!1つお願いがあるの!」
「何?プレゼント?」
「そうじゃなくてね、入籍は私の誕生日にして欲しいの!」
「…はっ…?」
の突拍子も無い一言…
「どうせなら同い年の時に結婚したいんだもん。」
これは…からのプロポーズ…になるのか…?
決して迷惑な話ではないんだけが…
告白をしてくれたのもだし…
プロポーズは絶対に俺から…って決めてたんだけど…。
この展開はあまりに情けなくないか…?
「。」
「うん?」
「その話に関しては…返事は保留。」
「え…っ…?」
そう言われて…心臓が凍り付いたように固まる。
保留って…
「あ…済まない。言い方が悪かった…。」
今にも泣き出しそうな顔で俯く。
「そうじゃなくて…」
「え?」
「プロポーズくらいは俺からさせてくれないか?」
「アスラン…。」
そう言われて初めて…自分が口走ってしまった事の重大さに気付く。
今私…さり気なくプロポーズした…?
「、俺と結婚しよう?」
「…はい。」
「じゃあ、入籍は今度のの誕生日にしようか?」
「え!?今年!?」
するとしても来年以降のつもりでいたんだけど…
うろたえるの反応を楽しむように…アスランはクスクスと笑い出す。
「冗談だよ。」
アスランの笑顔に…の顔も自然と綻ぶ。
「でも…最高の誕生日にしよう。」
「…うん。」
【あとがき】
どうにもアスランに偏りがちですね〜。
でも秋という事で…アスランにしてみました。
お誕生日にひっかけて…ね。
何だかのんびりペースで進めているお題夢。
ようやく後半戦って感じです。
さぁ…残りのお題は誰で書こうかな…♪
2005.9.6 梨惟菜