「!!」
今日もエターナルは活気が溢れている。
ごく僅かのクライン派の集まりによって構成されたエターナルは人手不足の筈なのに…。
何故かエターナルに出入りする人は多い。
それは勿論、目当てで寄って来る輩のせいだ…。
小さな恋の物語2
「!一緒にお茶をしないか!?美味しい紅茶があるんだ。」
今日一番の訪問者はカガリ。
「わぁ♪私の好きな葉だ…♪いいんですか?」
「勿論だ。の為に持って来たんだからな。
それと、敬語も使わないでくれ。もっとと仲良くしたいんだからな。」
カガリの根回しは完璧だ。
の好きな物をしっかりとリサーチし、それを餌にの興味を引く。
そして、無邪気なはまんまとその罠に引っ掛かるのだ。
相手が女だけに俺も拗ねるに拗ね切れないのが痛い…。
は嬉しそうにカガリの後を付いてクサナギに行ってしまうし…。
ここで俺が付いて行くのも情けない話…だよな…。
「あれ…?、居ないの?」
を求めて次に現れたのはキラ。
「あぁ…今頃カガリとお茶でもしてるんじゃないか…?」
「…せっかくの好きなクッキー…貰って来たのに…。」
この姉弟は…
俺との仲を知っていながらも遠慮という言葉を知らないらしい…。
それとも、俺なんか眼中にも無いって事か…?
「何なら俺がに渡しておくけど?」
「あ…ううん。いいよ。また後で来るから…。」
まぁ…俺に渡したって意味は無いんだろうけどな…。
おかしい…
が皆の前で俺の事を…って告白して…
偶然にもその現場に俺が出くわして…
皆の前でを連れ去って…両想いになって…
今では誰もが周知の恋人同士となった筈なのに…
相変わらずは皆のアイドル的存在のまま。
それは構わないんだ。
自分の彼女は誰からも好かれる魅力的な子。
嫌われているよりはずっといいと思う。
俺も自慢したくなるしね…。
でも…
さすがにこの状況はおかしい。
以前からを気に入っていた奴らが、以前に増してに近付くようになった。
俺達の仲は公認じゃなかったのか!?
日々の元を訪れる下心ミエミエの奴らのお陰で、俺とが2人きりの時間が全然無いじゃないか!
誰か…エターナルへの出入りを禁じてくれ…
「!」
カガリとお茶を楽しんで…エターナルに戻ろうとした時だった…。
「アレ?ディアッカ…珍しいね。」
普段はアークエンジェルに居る彼をクサナギで見掛けるなんて珍しい。
「エターナル行ったらココに居るって聞いたからさ…。」
「あたしを探してたの…?」
「そ。退屈だから遊んで貰おうと思ってさ♪」
「…あたしの事、暇人だと思ってない?」
何かと自分の所へ現れるディアッカの真意に未だ気付かない。
相変わらずの鈍さに呆れるディアッカ。
「あのなぁ…」
…俺は結構真面目にお前の事を…
「?」
「…ま、いいや。」
マジに告った所で相手にされる筈もないしな…。
「エターナルに帰るんだろ?送ってくぜ♪」
「へ…?あたしは別に…」
「いいからいいから♪」
「遅い…」
「あらアスラン。はまだ戻りませんの?」
苛々しながらの帰りを待つアスランを見て、ラクスは嬉しそうに微笑んだ。
「楽しそうですね…ラクス。」
「いえ。アスランも大変でしょう…と思いまして…。」
「無邪気なは可愛くて良いと思うんだけどね…。
今日はまだディアッカも来てないし…。」
「あら…ディアッカ様なら少し前にお見えになりましたよ?」
「え?」
「はクサナギへ行きました…とお伝えしたら帰られましたわ。」
「…ラクス…」
「はい?」
「いや…何でもない…。」
彼女も確信犯なのだろうか…
ディアッカにそんな情報を与えたらクサナギに飛んで行くに違いない。
「すみません…を迎えに行って来ます。」
ディアッカが向かったのなら余計に心配だ…。
アスランが踵を返したその時だった。
「あ…アスラ〜ン!」
通路の先から俺を呼ぶ声が聞こえる。
視線の先には俺の可愛い…
…と、ディアッカの姿。
また余計な邪魔者まで連れて帰って来て…
の側に男が居るだけでそいつが危険に見えてしまうのは俺がおかしいからか…?
「遅い。」
「きゃっ…!!」
側に寄って来たの手を引いて腕の中に収めると、彼女越しにディアッカを軽く睨む。
「おぉ…怖い怖い。」
「…?」
ディアッカの発言に首を傾げる。
「ジャスティスの整備を手伝って貰おうと思って待ってたんだ。」
「あ…そうだったんだ。ゴメンネ?すぐに始めよ?」
「じゃあ、そういう事だから…またな?」
相変わらずディアッカを睨んだままのアスランはの腰へと手を回す。
「まぁ…ごゆっくり…。」
どうやらアスランの機嫌は最高潮に悪くなっているらしい。
この辺で引き下がっておくのが利口だ。
アスランを怒らせると後々厄介だからな…。
「!データの入ったフロッピー、持って来てくれないか?」
「あ!は〜い!!」
コックピット内でOSの確認を取るアスランと、機体の下でデータの処理を行う。
アスランが声を掛けると、の可愛い声が下から聞こえて来る。
「はい、これで良いんだよね?」
はフロッピーを片手にコックピットを覗き込む。
「あぁ…済まない。今手が離せないんだ。ついでにデータ出してくれないか?」
「うん。分かった。失礼しま〜す。」
そう言うとはコックピットの中に体を滑り込ませる。
「わ…やっぱ2人入ると狭いんだねぇ…。」
さすがに窮屈に感じられるコックピット内に2人きり。
恋人同士なのにこうして2人きりでいられる時間が少ないのは絶対におかしい…。
そう思いながらもキーボードを叩き続ける俺の隣にやって来たはディスクを入れ、起動させる。
やっぱり可愛い…よな…。
こんなチャンスも滅多に無いと思ったアスランは、キーを叩く指を止め、を抱き寄せた。
「アスラン!?」
「何?」
「何って…」
手が離せないんじゃなかったの…!?
抱き寄せられる形となってしまった状態で、アスランは私のお腹辺りに顔を埋める。
小さなあたしがアスランを見下ろす形になるなんて滅多に無くて…。
目に映るのはアスランの濃紺の髪…。
そっと触れると柔らかい感触が指全体を包み込む。
こんなにカッコいい人があたしの恋人だなんて…。
こんなに美味しい話があっていいのかな…?
なんて思ってしまう事もしばしば…。
「アスラン?仕事…しなくても良いの…?」
「ん…もう少しだけ…」
…か…可愛い…
男の人にそんな事言ったら怒られちゃう…かなぁ…
でも…こんな風に甘えて来るアスランは珍しいから…。
そう言えば…私達って付き合ってるのに、なかなか2人きりになれない。
…なんでだろ…?
「さすがにちょっと遊び過ぎたかなぁ…?」
「いいんじゃないか?少しくらい意地悪したって…。」
「そうだぜ?どうせ今頃イチャついてるんだろうしさぁ…。」
明らかに確信犯の3人…。
2人が両想いなのは仕方の無い事だけど、やっぱり面白くないから…。
こうやって計画的に2人の邪魔をするのが密かに楽しみらしい。
「やり過ぎると後が怖いからな…しばらくはそっとしといてやるか。」
「今度はどうやって苛めてやろうかなぁ…♪」
アスランの苦難はまだまだ続きそうです。
【あとがき】
初の続編リクを頂きました。
甘夢…になってない気もするんですが…(汗
嫉妬するアスラン…を精一杯表現させて頂きました。
ゆな様、いかがでしたでしょうか?
今回はちょっと好奇心というか…管理人の好みで書かせて頂いた部分もありまして…
年上の筈のアスランに可愛い…という感情を持ってしまうヒロインちゃんを書きたかったのです。
ここまで読んでくださってありがとうございました♪
2005.5.23 梨惟菜
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