パタパタパタ…



せわしなくあちこち走り回る少女。



そんな彼女の姿に癒される男は意外と多いらしい。



元クルーゼ隊トップガンの彼もそう。


気付けば彼女を目で追っている。













小さな恋の物語


























「あ〜いたいた…。!!」



「…なぁに?」



くるりと振り返るとそこにはディアッカの姿。


オーブの人達と同じ、オレンジ色のジャケットが良く似合う。

まぁ、彼の場合は何を着ても似合いそうなのだけれど。





「今暇じゃないか?」


「う〜ん。暇と言えば暇だけど?」



「じゃあさ、食堂でお茶でもしようぜ。

 アークエンジェルの奴らがお前と話してみたいってさ。」



「何か楽しそうだね。行く。」







はニッコリと微笑むとディアッカの後を追い掛ける様に付いて行った。



その様子を偶然通り掛ったアスランは2人を見て首を傾げる。



エターナルにディアッカが来る事は珍しい事。


ディアッカの機体はアークエンジェルに置いてあるし、

何よりもディアッカお気に入りの彼女はアークエンジェルのクルーの筈…。




でも、今のは間違いなくとディアッカ。

この艦で赤服を身に纏っているのは自分と彼女しか居ないから。





















「え〜と…初めまして。です。」



アークエンジェルにはと同年代の人間が多く、すぐに馴染む事が出来た。


…というか、一方的に気に入られたと言った方が正しいのかもしれない。




って小さいんだな…。身長何センチ?」


「えぇっと…145cm…?」


「150cm無いんだぁ…コーディネイターでは珍しくない?」




自分達よりも随分と小柄な少女に皆は興味津々。


「だろ?クルーゼ隊に居る時も小さくて目立ってたんだぜ?」


「もう!それ言わないでよ!気にしてるんだからぁ…。」



何故か年上年下問わず男性から色々と声を掛けられる事が多く、

それが疑問で仕方ないのだが…。




「これでも一応15歳なんですからねっ!!」


「ね、彼氏居ないの?」


「居ない居ない。モテるけど彼氏は居ない。」


「だから何でディアッカが答えるのよぉ!」


拳を作ってディアッカに殴り掛かりたい所だが、やはり小さすぎて届かない。


それどころか胸の前で簡単に抑えられてしまう始末。


小さいってホントに不便。







「でも、可愛いよね。小さい子、僕は好きだな。」


「何?キラってばみたいな子が好み?」


「えっ…そういう訳じゃ…」


ミリアリアの鋭い指摘にキラは思わず赤面する。

この様子だとまんざらでもなさそうだ。





「皆やめろよ。が困ってるじゃないか。

 でもホント、可愛いよな。私の妹にならないか?」


「へ…?」



「カガリってそんな趣味があったの!?」


「ばっ…!!何言ってるんだ!そんな訳ないだろう!?」




意味の分からないやりとりが続く中、当の本人であるは困り顔。


その様子を見兼ねたディアッカは大きく咳払いをして話を中断させる。




「あのさぁ…盛り上がってる所悪いんだけどな、にはちゃんと王子様が居るワケよ。」



「ちょっ///ディアッカ!!」



今度はが真っ赤になる。

どうやらには片想いの相手が居るらしい。







「へぇ〜そうなんだぁ♪」


「誰!?」


あまりに皆が面白いくらいに食い付いて来るからディアッカは楽しそう。


逆には一気に質問攻めでタジタジ…。



「ディアッカ!!余計な事言わないでよっ!!」


どうしてくれるのよ!!




「だからあんな鈍感やめて俺にしとけっての。」


「そうじゃなくて!!」


もうこれ以上注目浴びたくないのに…

よりにもよって好きな人の話だなんて止めて欲しいよぉ…




「あのなぁ…隠してるつもりだろうけどバレバレ。

 言っとくけどな、ヴェサリウスに居た時だって本人以外全員知ってたぜ?」


「嘘!!」






いつの間にか周囲の人間を無視してとディアッカの討論会が始まっていた。


それでもその様子が面白いと思った他のメンバーは楽しそうに傍観している。






「大体な、アイツのどこが良い訳?顔?

 …ってか顔だけだよなぁ…アイツの場合。」


「そんな事無いもん!!

 優しいし…困ってる時には一番に気付いて声掛けてくれるし…。

 それにディアッカみたいに軽くなくて誠実だし!!」


「でも機械オタクじゃん…。」


「オタクじゃな〜い!!」





『機械オタク!?』





その単語から連想される人物は皆同じらしい。






の好きな奴ってアスランなのか!?」



「へ!?」



もの凄い勢いで迫って来たのはカガリ。


しまった…周りに人が居たんだっけ…


気付いた時にはもう遅い。



その場に居た全員に知られてしまった事になる。


ここに本人が居なかったのが不幸中の幸いというものだ。





「いや…えっと…」


「私もアイツだけは止めた方がいいと思うぞ!」


「何で!?」


「確かにそれなりにいい男だとは思うけど…には釣り合ってない!!

 にはもっと年相応の相手がいいと思うぞ!」


「…ってアスランは16なんですけど…」




それはが幼く見えるのか…


それともアスランが老けて見えるのか…



どっちにも取れる意味なだけに本人も複雑だ。








「と…とにかくっ…私はアスランがいいの!!」






「「「あ…」」」


「へ?」



が叫ぶのと同時に皆が一斉に出入口へと視線を向ける。



「…だってさ。アスラン。」




…??


…アスラン…?





「えええええええええっ!!!!!!!」





声にならない声で叫ぶにニヤニヤと怪しい笑みを向けるディアッカ。


怖くて振り向く事が出来ないを強引にアスランの元へと連行する。






「…という訳で後は頼んだぞ。」


「ちょっとディアッカ!!」




ディアッカがひょいとを宙に投げる。

…と言っても無重力の中での事。



急に投げられてバランスの取れないは不安定に宙を舞う。


不意に手首を掴まれて慌てて振り返るとそこには間違いなくアスランの姿。





「あ…えっとあの…」





この場合はどうしたら良いのでしょうか…


目の前には少し頬を赤く染めて対応に困っているアスラン。

その表情を見る限りではやはり今の会話は筒抜け確定。



しかし後ろにはその他大勢の視線…。






「と…とりあえずエターナルに戻ろうか…?」


「あ…う、うんっ…!!」





















「えっと…さっきの話なんだけど…」



アスランにはラクス嬢との事もある訳だし…

言うつもりなんて無かったんだけど…


さすがにこの期に及んで悪あがきはかっこ悪いです…。





「ア…アスランが好き…です。」




覚悟を決めて言ったものの、返事を聞かされるのは非常に怖い。


仮にも相手は婚約者持ちじゃない…。

明らかに分が悪すぎる…。



失恋確定とは言え、やっぱり本人から言われてしまうとショックだし…。


怖くて思わず俯いていたら手が震えていた。


ヤバイ…涙出そう…


こんな所で泣いたらバレバレだ…



一生懸命涙を堪えると震えが悪化してしまう…。







「え…?」



フワリと温かい物が触れたと思ったら、視界が真っ赤に染まる。


自分と同じ赤服…。


アスランに抱き締められているのだと気付くのに時間は掛からなかった。




「え…あ…あのっ…!!」


「俺なんかでいいのか…?」


「え…?」


の好きな奴が俺だって知って凄く嬉しいんだけど…。」


「え…?」



誰だって予想もしない返事が返って来たら思考が止まってもおかしくない。



つまりは…えっと…


アスランも私を好きって事…?


そういう事でいいのでしょうか…?




「もう一度聞くけど…俺なんかがの恋人になってもいいのか?」


「ア…アスランこそ…ラクス嬢じゃなくても良いの?」


「親同士が勝手に決めた婚約だよ。

 それに、ラクスはキラの事が好きみたいだから気にしなくてもいいさ。」





アスランは決して嘘を付かない人だから…

言葉にしてハッキリと言われると全ての迷いが吹き飛んでしまう。



「うん…。アスランが好きです。」


「俺も…ずっとが好きだったよ。」


「ずっと?いつから?」


「アカデミーの頃からずっと。」





は何処に居ても目立つから。


いつもパタパタ忙しそうに走り回ってて…

何事にも一生懸命で元気で明るくて…



だから周りの男は皆に惹かれるんだ。


周りはライバルだらけ…。



でも気になって仕方が無くて…。





…好きだよ。」



そう言っての頬に手を触れると、は頬を赤く染めながらゆっくりと瞼を閉じる。


の柔らかそうな唇に触れようとしたその時…








『コラ!押すなって!!見つかるだろ!!』


『ちょっと!喋ったらバレるじゃない!!』



ガタガタ…


扉の向こう側から聞こえて来るヒソヒソ声と怪しい物音…。


から手を離したアスランは眉間にしわを寄せて扉へと向かう。









プシュー




「「「あ…」」」





「お前ら…」


「い…いやぁ…邪魔するつもりは無かったんだけど…な?」


顔を歪めながらも何とか笑顔で対応しようとするディアッカ。


「私は邪魔するつもりで来たんだぞ!可愛いがアスランに騙されないようにな!」


どうやら本気での事が気に入ってしまったらしいカガリは納得がいかないご様子。



「いや…僕は別に…ただの付き添いだから…ね?」


あくまでも自分は関係無いと言い張るキラ。








「頼むから自分の艦に帰れ!!」













…アスランの苦労は当分続きそうです。














「アスラン…。」



3人を追い返した後もアスランは微妙に不機嫌。


そんなアスランの袖をちょいと引っ張る



「ん?」


どう頑張ってもアスランより身長の低いはいつもアスランを見上げる形になる。



か…可愛い…


上目遣いになるはいつもの5割増しで愛らしい。







ちゅっv




上手く無重力を利用したは体を浮かせてアスランの唇に軽く触れるだけのキスをした。






「アスラン、だいすき♪」


















【あとがき】

…何だか訳の分からない作品に仕上がってしまいました。

まずは一言ゴメンナサイです(汗)

普段逆ハーを書かないだけに苦労しますね。

でも逆ハーは楽しい。

なのでもうちょっと修行しようと思います!!

今回のリクエストは…

ヒロインは赤服でアスランより1つ年下で…

小動物系。

更に逆ハーでアス落ち。

カガリVSアスランなんかあれば尚良し。

…という事で…

全部の要素を頑張って入れたらこんな事に…

ゆな様、力不足な管理人で申し訳ないです!!

また感想聞かせて下さいね。

お待ちしております。







2005.5.17 梨惟菜






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