「だからわたくし、確かめて参りますわ。」
「え…?」
「プラントに行って参ります。」
急にラクスが私にそう宣言した。
「じゃあ…私も…」
「いいえ。はここに…アークエンジェルに残ってくださいな。
でないと…キラが心配します。」
守るべき人、帰るべき場所
「ハァ…」
広がる深海の景色には深く溜息をついた。
これで何度目だろうか…。
当の本人も気付かない内に漏れる溜息。
深い深い海の底…
光の差し込まない深海…。
その暗い闇の世界がの心を支配して行くように包む。
「…」
「あ…キラ…」
1人落ち込むを心配して現れたのは彼女のたった1人の愛しい恋人。
「ラクスが…心配?」
「うん。」
黙って隣に立ってくれる恋人の肩にそっと自らの頭を乗せる。
キラは落ち込む彼女を支える様に、の腰へと手を回した。
私とラクスは小さい頃から一緒だった。
お互いの父が親友同士だったから、ラクスと私は一緒に育ったも同然で…。
まるで姉妹の様な関係だった。
私は悩みがあったらいつもラクスに相談していたし、ラクスも親身になって相談に乗ってくれた。
追悼慰霊式典の下見の時も…
反逆罪として追っ手から逃げる時も…
エターナルに乗ってプラントを出る時も…
私達は必ず一緒だった…。
だから、ラクスが私を置いてプラントに行くと聞いた時、信じられなくて…。
私とキラが離れ離れにならないように…そう言ってくれたのかな?
「にとって…ラクスは家族みたいな存在なんだよね…。」
「うん。ずっと一緒だったんだもん…。
ただでさえ命を狙われてるのに…。」
「うん。心配だよね。
でも、まで行っちゃったらもっと心配。」
「キラ…。」
そう言ってくれる彼の顔を覗き込むと、キラはニッコリ笑って私を抱き締める。
いつもよりも力の籠った腕…。
「は…ここに…アークエンジェルに居て?
僕の手の届かない所に行ってしまわないで?」
「キラ…」
「もう…離れ離れになるのは嫌だよ…。」
初めてキラと会ったのは、アークエンジェルの中。
救命ポッドに乗せられた私とラクスを助けてくれたのがキラだった。
実はお互いに一目惚れで…。
キラと一緒に居られるなら、ずっと地球軍に居てもいいって思ってしまったくらいに惹かれてしまってた。
プラントで再会した後もすぐに離れ離れになっちゃって…。
だから、こうして一緒に居られる事がすごく幸せなの。
離れる事が不安なの。
ずっとこの手を離したくなくて…。
ずっとこのままでいたくて…。
こんなに誰かを愛しいと思ったのは初めてなの。
「本当はね…ラクスと一緒に行った方がいいんじゃないかって思ったの。」
「…」
「でも、バルトフェルドさんが付いててくれるって言ってるし…。
私なんかが付いて行ったら、逆に足手まといだよね…。」
私を抱き締めていたキラの手が少しずつ上へと移動して…
私の髪の毛を撫でる。
「ここに居ても、私に出来る事はあんまり無いと思うんだけど…。」
「そんな事無いよ。僕には必要な人だから…。
だから、ここで一緒にラクスとバルトフェルドさんの帰りを待とう…ね?」
「うん…。」
不安な心をかき消してくれるかの様にキラは私に微笑みかけた。
その落ち着いた柔らかい表情は、いつも私を安心させてくれる。
「じゃ、ちょっと行って来るよ。」
「え…?何処に?」
「ラクス達、きっと簡単には行けないと思うから援護しなくちゃ。」
「そっか…そうだよね。」
キラの言葉に、何も出来ない自分の無力さを痛感した。
私もMSに乗れたら…
少しでもキラのお手伝いが出来たのにな…。
「、余計な事は考えないで?」
「え…?」
「僕は、ブリッジでに見送って貰うのが好きなんだ。」
「どうして私の考えてる事分かっちゃったの?」
「の顔にそう書いてあったからね。」
「キラに嘘はつけないなぁ…。」
「じゃあ…すぐに戻って来るから、ちゃんと見送って。」
「…うん。分かった。」
私は軍服の襟を整えると、キラに向かって笑顔を見せた。
「気を付けて行ってらっしゃい。」
「うん。行って来ます。」
私が少し背伸びをして顔を近付ける。
それに応える様に身を屈めるキラ…。
磁石の様に引き合った私達はそっと唇を重ねる。
2年の間に背が伸びたキラ…。
前はあんまり変わらなかった距離が少し離れちゃった。
いつもキラの顔を見上げる私…。
背丈は離れちゃったけど、心の距離は2年前よりも確実に近くにあって…。
キスする時に少し屈んでくれるキラの仕草が大好きなの。
「フリーダム、発進お願いします!」
『キラ・ヤマト。フリーダム、行きます!』
私の合図と同時に、キラの乗ったフリーダムは大空へと羽ばたいて行った。
【あとがき】
26話のキララクを見てすぐに書こう!と思ったお邪魔夢です。
キララクのお邪魔夢は初めてです…。
上手く書けていたでしょうか?
26話はあまりに痛すぎます!
アレでキスシーンでも入ってたら殴りこみでした。
では、少しでも癒しになれば幸いです。
2005.4.21 梨惟菜