「何となく…分かってたんだ。」



気まずい沈黙を先に破ったのはカガリだった。



きっと…何から話そうかって悩みに悩んだんだと思う。


その証拠に、カガリの目の下には隈が出来ていた。






「アスランは…が好きなんじゃないかって…ずっと思ってた。」


















愛情と友情のはざまで


    16





















「だからって私がした事は許される事じゃないと思う。

 の気持ちを知っていながら、アスランの優しさに漬け込むような事をして…。」



私が最初にカガリに対して抱いた感情そのものだった…。


カガリの行為が許せなくて…怒りに震えて…


何も言えないままショックで倒れ込んで…




けれど、立場は逆転してしまった。


アスランが好きだと言ってくれた相手は私で…

今度は逆に、カガリが傷付く結果となってしまった。



そりゃあ…

男1人に女が1人…


結果、誰かが必ず傷付かなくてはならない事。


分かってはいたのだけれど…


自分が幸せを手にしてしまった喜びと、カガリが傷付いてしまった悲しみ…


色々な感情が一気に押し寄せて来て複雑な気持ちになる。










「私の事はもういいんだ。

 アスランにはちゃんと告白して断られた訳だし、その結果、がアスランと幸せになって良かったと思う。

 けど…本当なら傷付かなくても良かった筈のを苦しめてしまった事…それだけはどうしても謝りたくて…。」






本当に済まない…



カガリが目の前で頭を深く下げる。








どうして…そう思えるのだろう…。


アスランとカガリが付き合っていると聞いた時…


私は苦しくて悲しくて…


息をする事すら苦痛で堪らなかった。


なのに、カガリはどうして私達の事を祝福など出来るのだろう。





でも…


それでもアスランの事だけは譲れなかったから…。






「ありがとう…カガリ。」



精一杯の笑顔でカガリにそう答えた。






















「少しは落ち着いたか?」



「ん…何とか…。」






カガリと別れて真っ先に向かった先は勿論アスランの元。


アスランの顔を見るなり、安心して涙が溢れてしまって…。






「泣かせないって約束したばっかりなんだけどな…。」



そう言いながら黙って抱き締めてくれたアスランは本当に優しい人だと思う。





私…アスランを好きになって良かった…。




側に居られるだけでこんなにも幸せを感じさせてくれる人なんて他には居ない。



アスランだから安心できる…


アスランだから何でも話せる…


アスランの前でだから…素直に泣ける…。



アスランが…愛しくて堪らない。











、今度の週末、2人で出掛けようか?」


「え?」



「ちゃんとしたデート…した事無いだろ?」



恋人同士としての初めてのデート…


その響きに胸が高鳴った。



「う…うん。」


「じゃあ、何処に行きたい?の行きたい所に連れて行くよ。」


「…何処でもいいの?」



「遠くない所だったら何処でも。」


「海!!」



「…本当に好きなんだな…。」



季節的にはまだまだ寒いと思うんだけど…



まぁ…いいか。





















「寒い〜〜〜!!」


「だから言っただろ!!」





案の定、冬の海は寒い。


前に来た時に痛感した筈だったのに、どうしても初めてのデートは海が良かったの。


自分でも何で海にこだわるのかは分からないけれど…。





冬独特の荒波に冷たい北風…。


今にも飛ばされてしまいそうなの華奢な体。


真っ白いダッフルコートを羽織っているけれど、それでも顔は寒そうだ。




「え?」


アスランは私の手を取ると、自分のコートのポケットに納める。


「こうしてたら少しは暖かいだろ?」


ポケットの中で手を繋ぐ形になって…

普通に手を繋ぐ感覚とは違って何だか一層恥ずかしい。



でも、手から伝わる温もりが心地良くて嬉しくて…。


どうしよう…


何か…物足りないかも…。



躊躇いながらそっとアスランを見上げると、アスランの微笑が舞い降りる。



「あ…」


目を閉じる暇も無く、唇が塞がれた。


アスランの冷たい唇は、少しだけ潮の味がした。



「「しょっぱい…」」




唇が離れたのと同時に呟いた言葉は共に同じで…。


それが可笑しくて2人で吹き出して笑う。




そんな他愛の無い行動にさえ幸せを感じる。



笑い疲れた私達は互いに顔を見合わせて…



そしてもう一度キスをした。




今度はちゃんと、瞳を閉じて…

アスランの温もりだけを感じられるように…。












「何処か店に入ろうか。このままじゃ風邪引きそうだ。」


「…そうだね。」





私達はポケットの中で手を繋いだまま、海岸沿いを歩く。




「アスラン…」


「ん?」




「…だいすき…」


「うん。俺も…。」






こうして2人で同じ気持ちを分け合える事…


寒い冬空の下で噛み締め合いながら、私達は歩き続けた。



いつまでも同じ気持ちで居られる事を願いながら…


友情と同じ位に大切な愛情を育もうと共に誓いながら…














愛情と友情のはざまで



 End











【あとがき】


ダラダラと続けても仕方が無いと思いまして…

とりあえず本編はこれで完結という形を取らせて頂きました。

特に後半はスランプ期に突入という事で…

大変見苦しい作品になってしまった事、心よりお詫び致します。

感想や励ましのお言葉を下さった皆様、本当にありがとうございました。

番外編として書きたい話が何点かありますので、追々書いて行こうと思っております。

ここまでお付き合い下さいましてありがとうございました。






2005.5.18 梨惟菜






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