同じ顔だけど性格は正反対…
同じ髪の色…同じ瞳の色だけど好みは全く違う。
ただ産まれた瞬間が同じだっただけで、私達は違う人間。
でも、一番身近な存在。
時には大事な家族で…時には一番の親友。
私にとって、カガリはそんな大事な存在。
共通点
気が付けば目で追ってる。
優しくて強くて…頼りになる人。
好きになるのは簡単だった。
アスラン・ザラ…
今までに何度か恋をしたけれど、こんな気持ちは初めて。
見てるだけで幸せ…
同じ空間を共有出来るだけで幸せ…
そこに居てくれるだけで私を幸せにしてくれる、不思議な人。
でも…それ以上彼に踏み込んではいけないの…。
「アスラン!!」
笑顔で彼に駆け寄るのは私と同じ顔の彼女。
私の双子の姉…
カガリは元気で明るくて何事にも積極的で…
おとなしくて消極的な私とは大違い。
双子なのにどうしてこんなに差が出るのかな…。
「カガリ…どうしたんだ?」
「今日、街に買い物に出ないか?欲しい物があるんだ。」
そう言って彼を誘うカガリは既に出掛ける準備は万端。
お気に入りの洋服を着て、珍しく髪をまとめたりなんかして…
後はアスランのOKを貰うだけ…って感じ。
「そう…だな。最近あまり出掛けてないし…。」
「決まりだな!じゃあ早く行くぞ!」
「え!?今すぐに!?」
「当たり前だろ?私はもう準備出来てるから!」
そう言われ、アスランは何故か近くに居た私へ視線を向けた。
「、君も一緒に行かないか?」
「…え…?」
急に話を振られ、私は戸惑う。
まさか私も一緒に誘われるなんて思ってなかったから…。
オロオロとしたものの、その先に立つカガリの姿を見て我に返った。
「ううん。私は…ちょっと用事があるから、2人で楽しんで来て。」
笑顔でそう返していた。
「そう…か。用事があるなら仕方ないな。」
「せっかく誘ってくれたのにごめんね。カガリを宜しくね。」
「…あぁ…。」
「じゃあ、行って来る。」
「…はぁ…」
今日のカガリ…可愛かったな。
いつもならスカートなんて絶対に履かないのに…
しっかりとオシャレしてるカガリと一緒に出掛けるなんて…
それに…カガリは2人で出掛けたかったんだから仕方ないよね…。
『用事がある』なんて断ったけど、本当は暇。
1人展望デッキに辿り着いた私はその場にゆっくりと腰を下ろす。
今日のオーブもいい天気。
暖かい陽射しに照らされた海はキラキラと輝いていて…
その反射した光の眩しさに思わず目を細めた。
「あれ???」
不意に背後から声を掛けられ、振り返る。
「…フラガさん…」
「お前、嬢ちゃんと出掛けたんじゃなかったのか?」
「え?」
「何かオシャレしてたからてっきり姉妹で買い物だと思ったんだけど…」
「違いますよ。カガリはアスランとお買い物です。」
「…アスランと?」
「はい。私も一緒に…って言われたんだけど、邪魔しちゃ悪いと思って。」
の寂しげな表情に、ムウの顔が少し歪む。
「じゃあ、ちょっと俺の話し相手になってくんない?」
「へ?」
「ちょうど退屈してたんだ。」
「奇遇ですね。私も退屈してたんですよ。」
「…俺の勘違いかな?」
持っていた缶を手の中で転がしながら、フラガさんが呟く。
「何がですか?」
「はアスランが好きなのかと思ってたんだけど…。
いや…間違いなく好きだって確信してたんだよなぁ…。」
胸がドキッ…と高鳴った。
「な…何でそう思うんです?」
双子のカガリでさえ気付いていないのに…
「俺がの事、見てたから。」
「え…?」
「ま、にとって俺なんて三十路前のオッサンだろうけどさ。」
「フラガさん…?」
「あ、言っとくけど、俺は本気で言ってるんだぞ?」
ちょっと待って…
あのフラガさんが私を!?
冗談にしては笑えないんだけど…これはどう対応するべきなの…?
「そんなあからさまに迷惑そうな顔するなよ…。」
「え…いえ…そうじゃなくて…」
「アスランの事、好きなんだろ?」
「……はい…」
見透かされてた。
私の本当の気持ち。
「じゃあ何で嬢ちゃんとの仲を取り持とうとしてんの?」
痛い所を突かれた。
「カガリの事…アスランと同じ位に好きだから。」
恋愛に後先なんて関係ないと思う。
でも、先にカガリから言われてしまったアスランへの想い。
まだ想いは告げていないって言ってたけど、アスランを見るその瞳は輝いていて…。
趣味も好みも全てが正反対だった私とカガリが同じ人を好きになったのは初めて。
カガリが好きになった人を好きになった事は無かったし、
逆に私が好きになった人をカガリが好きになった事も無かった。
双子なのに全く違う私達の初めての共通点…。
同じ人を好きになりました…。
でも…カガリを傷付けてまで自分の想いを貫けない。
私の想いをカガリに告げて、カガリを悩ませたくない。
私1人がこの想いを封じ込めれば全ては丸く収まる。
だから…アスランへの想いを切り捨てる事に決めたの。
そんなの想いを悟ったムウは深い溜息を1つ吐いた。
「…じゃあ…俺と付き合おうか。」
「…え!?」
「言っとくけど、俺はアスランよりもずっといい男だぞ?
包容力だってあるし、人生経験だってずっと上だ。
ただ、若さでは劣ってるけどな?」
冗談混じりに告げるフラガさんの瞳は優しくて…
何故か吹き出していた。
「おいおい…そこは笑う所じゃないって。」
「だ…って…フラガさんがこんなに面白い人だなんて思ってなかったから…。」
「だろ?アスラン以外の男に目もくれてなかった証拠だな。」
「…そうですね…。」
優しい人…だなぁ…。
それに…大人の男の人…だ。
私の事を気に掛けてくれてる人に対して好きな人の事を話したりなんかして…
私って凄く失礼な事してるんだよね…。
なのに黙って話聞いてくれて…。
「よし、買い物に行くか!」
「え?」
「週末のクリスマスパーティーのドレス、決まってるのか?」
「あ…」
すっかり忘れてた…。
「忘れてただろ?」
「…はい…。」
「じゃあ行こう。俺がに似合うドレス、見立ててやるよ。」
「じゃあ俺は外で待ってるから…。」
「分かった。荷物持たせて悪いな。」
カガリがアクセサリー売り場の中へと消えて行く姿を確認したアスランは、側のベンチに腰を下ろした。
「凄い量だな…。」
想像以上の荷物にアスランは溜息を吐く。
街はクリスマス一色。
今日の買い物の目的は週末のパーティーの準備。
ドレス売り場にアクセサリー売り場…プレゼントを探す為に雑貨屋巡り。
行く先々、カップルばかり。
恋人達のイベントという雰囲気全開だった。
その時…
近くのドレス売り場に目を向けたアスランは表情を曇らせる。
ドレス売り場に居る…良く知る男女の姿…。
色鮮やかなドレスを手に取っては悩む…の姿。
そして、その傍らで声を掛けているのはフラガ少佐…。
用事って…少佐との約束だったのか…。
『メリークリスマス!!』
12月24日…
年に一度の一大イベント、クリスマス・イヴ。
アスハ家主催のクリスマスパーティーは想像以上に豪華なものだった。
お父様の挨拶回りに付き合う私とカガリはゆっくりする時間がなかなか取れなくて…。
ようやく開放されたのはパーティーの中盤に差し掛かった頃だった。
「そのドレス、誰に見立てて貰ったんだ?」
そんなの持ってなかったよな…?とカガリが私に問い掛ける。
「…フラガさんに…。」
「少佐!?お前、少佐とそんな関係だったのか!?」
「ち…違うって!そんな関係じゃないから!!」
「2人とも…どうしたんだ?」
「あ…アスラン!が私に内緒でフラガ少佐と…っ!!」
「だから違うってば!!」
「フラガ少佐と?」
アスランの視線が私に向けられる。
「あ…私とフラガさんはそんな関係じゃなくて…」
「そう言えば…って少佐の事、『フラガさん』って呼ぶよな。」
「カガリ!?」
「そっか…少佐か…ちょっと年上だけど…に似合うんじゃないか?
な?アスランもそう思うだろ?」
「え…?」
カガリは何も知らないから…
ごく普通にアスランへと話を振る。
2人の顔がまともに見れない…。
小刻みに震えながら、視線を床へと向けたその時…
「残念ながら、俺の片想いなんだよな。」
「少佐!」
「俺、マジだからって口説いてるんだけど、ちっとも靡いてくれないの。
他に本命が居るみたいでさぁ…。手強いね、この子。」
「本命!?!誰なんだ!?キラか!?」
「か…カガリには内緒!!」
もうこれ以上追求しないで欲しい…。
耐え兼ねた私はフラガさんの腕を引っ張ってバルコニーへと避難した。
「、流石に12月にここは寒いだろ…」
冷たい空気が肌を突き刺す。
それでも会場で火照った顔は未だに赤くて…。
「フラガさん!何であんな事言ったんですか!」
は思わず声を荒げて彼に意見した。
「だって…本当の事だろ?
それとも、本気で口説かれてくれる?」
「そうじゃなくて!アスランの前であんな言い方しないで下さい!」
「あぁ…アレ、俺なりの牽制のつもり。」
「…牽制…?」
そう言って、フラガさんが私を抱き締める。
「ちょっ…!何するんですか!!」
「言っただろ?俺はが好きだって。」
「だから私は…っ!!」
フラガさんの事は嫌いじゃない…。
優しいし、大人だし…頼れるし…
でも…私は…
「は…離して下さい…」
「嫌だって言ったら?」
「わ…私はアスランが好きなの…っ…
アスランがカガリを好きでも、カガリがアスランを好きでも…私も好きなの…!」
告白は出来なくても、想うのは私の自由だと思いたいから…。
他の誰にこの想いを偽ったとしても、自分にだけは嘘を吐きたくないから…。
「…だってさ…。」
「…え…」
するり…と腕を開放されて…
フラガさんの背後に見えたのはアスランの姿。
「…アスラン…!?」
今の…聞かれた!?
まさか今のって…わざと…?
「言っとくけど、俺はカガリの事、恋愛対象として見てない。」
「え…?」
「告白されたけど、ちゃんと断ったんだ。
が好きだから…って。」
「……!?」
「カガリは納得してくれたし、多分…さっきので気付いてると思う。」
アスランの言葉に、俯いた私はドレスの裾をギュッと握り締めた。
「俺は、ずっとが好きだったよ。いつも避けられてたけど…気が付けば目で追ってるんだ。」
私と…同じ…?
「だからが少佐と一緒に居るのに嫉妬して…一緒にドレス選んでるのを見て悔しくて…。」
隣に居るのが何で俺じゃないんだろう…
そう思うと、悔しくて仕方がなかった…。
「、確かにカガリには悪いって思うかもしれない…。
でも、その事での気持ちが離れて行くのは嫌なんだ。
だから…俺の想いを受け入れて欲しい。」
「で…でも…私…カガリの事…っ…」
「大丈夫だ。カガリならちゃんと分かってくれる。
誰よりもの事を大事に思ってるのはカガリだよ。
がカガリの為に身を引こうと思っていたのと同じ位にね…。」
「アスラン…。」
「だから、迷惑でなければ俺をの恋人にしてもらえないか?」
「…はい…。」
一言だけ…やっと出た言葉…。
その言葉に目を細めたアスランは、の華奢な体をそっと抱き締める。
「好きだよ。」
「…私も…大好き…。」
温もりを確かめ合う2人の元に、白い物がフワリと舞い降りる。
「…雪…」
一緒に空を見上げ、2人は再び抱き締めあった。
【あとがき】
大変お待たせ致しました。
双子ネタ、カガリ編でした。
何か…後半までフラガ夢になっちゃってます。
大変申し訳ないです。
他に絡むキャラが見つからなくて…(汗)
ひとまずハッピーエンド。
ユーリ様、こんな感じで大丈夫でしょうか?
また続編のリク、お待ちしております。
勿論、これで満足頂けるようでしたら別のお話でも構いませんし…。
本当にお待たせしました。
2005.12.20 梨惟菜