!聞いたぜ〜。」



「へ?何が…?」



食事を終え、部屋に戻ろうとしていた所をディアッカに捕まった。


ディアッカは何やら嬉しそうに…ニヤニヤしながら寄って来る。



「でも…ビックリしたぜ?そんな素振り、ちっとも無かったし…。」


「だから…何がよ?」



言っている意味が全く分からなくて…

しかも、それ以上詳しく話してくれる事もないし…。




「何が…って。婚約の事だよ。」


「は?婚約…?誰が?誰と?」


「誰って…お前だよ。イザークと婚約したんだろ?」


「…はぁ!?」




















私の婚約者様




















「イザークっ!!」


慌てた私は部屋に戻るのを止め、食堂に戻った。


食堂では残っていた赤服メンバーが談笑している。


突如、飛び込んで来たに、メンバーは目を丸くした。




「何だ?どうかしたのか?」


「どうかしたのか?じゃないっ!!」


珍しく怒りにも近い表情で迫って来るに、アスランとニコルも戸惑う。




「婚約って…どういう事なのよ!?」



「「婚約ぅ!?」」



その言葉に動じないイザークに対し、アスランとニコルは合わせて声を上げた。





「あぁ…その話か…プライベートな事だ。部屋で話そう。」


ちょっと…

プライベートな話…って…


よりにもよって、アスランの前でそんな言い方しなくても…



















「で?どういう事なの?」


流石に部屋で…という気分にもなれず、一目を忍んでデッキへとやって来た。


「俺が母上に申請したんだ。を婚約者に迎えたい…と。」


いつになく、イザークは真面目な表情でそう告げた。


「…何でそんな…急に言われても…」



知らない間にそんな申し入れをされていて…

きっと両親の事だ。

喜んでその申し出を受けたに違いない。


そろそろ…私の元にその連絡が入ってもおかしくは無い頃だ。





「言っとくけど…私の両親が何と言おうと、私は断るからね。」


大体、目の前に本人が居るのに告白もせずに婚約の申し入れって何!?


順番がおかしいじゃないの…。





「そう言うと思ったから先に婚約を仕掛けたんだ。先に噂が広まればアスランに対しての牽制にもなるしな。」



「…は?」


「いい加減、諦めろ。アスランはお前に興味は無いぞ。」



「…っ…」



知ってて…そんな事を…



「…イザークには関係無いでしょ!?とにかく!婚約はしない!分かった!?」




















「はぁ…」


疲れた…とにかく疲れた。


部屋に入り、照明も点けずにそのままベッドに倒れ込む。


何もする気が起きないし…考える気にもなれない…




あぁ…憂鬱だわ。




ビーッ…



薄暗い部屋の中に呼び出し音…

モニターのランプがチカチカと点灯する。



面倒くさい…


どうせ、実家からの通信なんだろうな…と思いながら、身体を起こす。




「…はい…。」



に通信が入っています。お繋ぎしますか?』


「…お願いします。」








、久し振りね。元気にしている?』


案の定、通信相手は実家からで…

モニターには母の笑顔。


「えぇ。とても…元気にやっています。」


『今日はあなたにお知らせがあるのよ。』



来たよ…


「イザーク・ジュールとの婚約の件…ですか?」


『あら。本人から聞いていた?』


「先ほど…。」


本人と揉めて来たばかりです…とは言えないけれど…。




『それがね、その後すぐにもう一つ婚約のお話が持ち上がったの…。』


「…は?」




















「貴様!どういうつもりだ!!」


あ〜あ…


やっぱり…派手にやってるなぁ…


食堂から、イザークの叫び声が聞こえた。



放っておく訳にも行かず…とりあえず中へ入る。



食堂には数名のクルーとディアッカ、ニコルの姿。




イザークは部屋の中心で、やはりアスランの襟を掴みながら眉間に皺を寄せていた。








…アレ、何とかしてくれよ。」


「…はぁ…」














「どういう…って。そのままの意味だけど?」


「ふざけるな!貴様にはラクス嬢が居るだろうが!!」


「そんな事は知らないな。彼女との事は両親が勝手に決めた事だ。俺の意思じゃない。」


「何だと…?」





「あのさぁ…私を無視して揉めないで欲しいんだけど。」





「「!!」」





「2人とも、どういうつもりなの?勝手に婚約の申し入れなんかしたりして…。

 大体、順番が逆なのよ。普通は本人に直接言うのが筋ってもんでしょう?」





イザークはともかく…


もう1人の求婚者がアスランだと聞いた時には正直驚いた。


いえ…むしろ、嬉しいです。



だけどね、人の気持ちも確認しないで勝手にバトルしてるのが気に入らないのよ。



私は物じゃないっつの…。





「2人とも、デリカシー無さ過ぎ。最低。」




「「…悪い。」」




「とにかく、2人との婚約は無かった事にしてもらうから。」




これ以上、注目を浴びるのはゴメンだ。


とりあえず、背を向けて食堂を出ようとする。




「言っとくけど、私は最低でも3年は付き合わないと婚約も結婚もしないからね。」




















…」



「あ…アスラン。」



昼間の騒動ですっかりと機嫌を悪くしてしまったは、1人で艦内を散歩していた。



その姿をようやく発見したアスランは迷わず彼女の元へと近付く。



「その…昼間は済まなかった…。イザークの行動に焦って…つい…。」



「…いいよ。あれからすぐに解消してくれたんでしょ?実家から通信あった。」



落ち込んだ表情で謝罪の言葉を述べるアスランに対し、柔らかい笑顔で返す。


その笑顔にアスランも安心したのか、頬を緩めた。




「あのね、私、別に嫌じゃなかったんだよ?

 …っていうか、正直、嬉しかったりして…。」



「え…?」



「アスランの事はね、アカデミー時代からずっと好きだったの。

 でも、アスランにはラクス様が居たでしょう?」




だから…アスランからの申し出だ…って聞いた時は本当に嬉しかったの。



「じゃあ…イザークとは…」


「イザークは私の気持ち知ってたの。それでいつも『諦めろ、俺にしとけ』って。」


「そう…だったのか…。」



「だからね、私とお付き合い、してもらえませんか?」



婚約よりもまず先に、『恋人』という繋がりが欲しくて…。


ううん。


普通の女の子だったら、きっとそれを望んでる。



このご時世、『婚約』とはどうしても気持ちが通い合っていなくても成立してしまうものであって…。


だから皆、恋人という響きには憧れるもの。




「俺も…が好きだよ。勝手に婚約を申し入れたりしてゴメン。

 改めて、俺と付き合って欲しい。」



「はい。喜んで。」





2人を祝福するように、暗い宇宙に流れる一筋の星…。


流れ星に願いを込めながら、2人はそっと、手を重ね合った。

















【あとがき】

イザークが哀れな事になってる気がします。

短編、久し振りに書きました。

アスVSイザ…という事で。

これも久し振りです。

ヒロインも珍しく強気なカンジで…。

書いててスッキリしますね。


愛佳様、リクエストありがとうございました。








2005.7.8 梨惟菜









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