今日こそは完璧な計画だった。





いつもタイミング良く現れる邪魔者さえ決して付いては来れないだろう。





今日こそ…一生に一度の大事な日になるんだ。







1週間かけて考え悩んで迎えたこの日…





人生で欠かす事の出来ない、大事な記念日…。






















  記念日























「おはようございます、アスラン。」





「おはよう、。」







いつも通り、車をクライン邸の前へと停車させると、タイミング良くが中から姿を現した。




今日も可愛らしいワンピース姿。




可愛い麦わら帽子に、薄手の白いカーディガンを手にしている。




全部…俺がリクエストした持ち物。









「こんな格好で良かったでしょうか?」




「あぁ。可愛いよ。似合ってる。」





「あ…ありがとうございます。」




照れて頬を染めた…。



助手席に回ってドアを開けてやると、ゆっくりとそこへ乗り込んだ。























「あの…今日はどこへ…?」



行き先をまだ告げられていないは窓の景色を眺めながら問い掛けた。





「もう夏も終わりだから…海に行こうと思うんだ。」




「海?」




「まだ行っていないだろう?それとも海は嫌いだった?」




確認しておかなかったけれど、初めてのデートで湖に行った時はとても喜んでいたから…



海もきっと好きだろうと思い込んでいたけれど、少し不安になる。







「ううん!大好き!」






首をブンブンと横に振り、は嬉しそうに微笑んだ後、再び外へと視線を向けた。













ステレオから流れるアップテンポな曲に体を揺らすの仕草に目を細め、海まで車を走らせる。

























「足元、気を付けて…。」




「ありがとう。」




差し伸べられた手を取り、不安定な場所へと誘導される。





「これ…ザラ家の…?」




「あぁ…。父上のなんだ。今日は特別にお借りしたんだ。」







ザラ家所有のクルーザーの豪華さに、は周りをキョロキョロとさせた。




自分の家にもクルーザーはあるけれど、滅多に使わない。




お父様はお忙しいし…私もラクスもクルーザーの操縦なんて出来ないから…。


















「アスランは…操縦出来るのですか…?」






「あぁ。ちゃんと父上に習ったよ。免許も持ってる。」






念の為、その免許をに見せると彼女は目を輝かせた。




「素敵…アスランは何でも出来るのね。」



「そんな事ないさ。さぁ、行こうか。」























クルーザーで海の上に出てしまえばもうそこに邪魔者は居ない。





完全に2人だけの世界が確立される。







この1週間はとにかくこんなシチュエーションを作ろうと必死だった。






何処へ行こうとしても尾行が付いてしまうし…





だから、あえてに行き先を告げなかった。



知らなければラクスに知られる事も無い。




そして、海という広い空間に出てしまえば追っては来れない。




完璧な計画。




















沖へまでやって来た所でエンジンを停止させる。





「気持ち良い〜。」





デッキへと出たは気持ち良さそうに太陽に向かって背伸びをした。




今日は波も穏やか…



時折吹き抜ける潮風がの長く伸びた髪を揺らす。







眩しくて儚げで…



誰よりも綺麗な…俺の婚約者…
















「…ア…アスラン…?」





フワリと後ろから抱き締めてやると、は驚いた。




ピンク色の髪から漂う甘いの香り…




こうして抱き締める事さえもなかなか出来なかった。




決して、恥ずかしいから…とかじゃない。








抱き締めたら壊れてしまいそうな華奢な体…。




俺よりもずっと小さな女の子…。








でも今日は…特別だから…。














「大事な話が…あるんだ。」






「この間聞けなかった…お話?」





「そう。」







を腕から開放し、向き合わせる。







「俺は…が好きだ。」




「…?…はい。私も…アスランが好きです。」








何を今更…と言うような表情で、はアスランの真剣な瞳を見つめた。





吸い込まれそうな…翠…





















…結婚しよう。」




「え…?」







突然のプロポーズ…












「ずっとと一緒に居たいんだ。どんな時も。」






「アスラン…」






嬉しくて…嬉しすぎて…




今にも涙が溢れてしまいそう。










「絶対に幸せにするから…だから…俺を選んでくれないか?」






そんな言い方されたら…






堪えていた涙が溢れ、視界を遮断する。









「私には…アスラン以外の人なんて考えられないのに。

 選択肢は一つしか…無いです。」

























「まぁ…それはおめでとうございます。」







「あ…ありがとう。」








夕方になり、クライン邸へとを送り届けた時にラクスへと報告をした。





頬を染めて微笑むはとても幸せそうで…




ラクスも嬉しそうに笑顔でそれを祝福する。















「アスラン、を幸せにしてさしあげてくださいね。」




「はい。必ず。」





双子の妹からの言葉に、アスランもまたハッキリと返事を返した。












「それでは具体的なお話を早速進めないといけませんわね。」




「え?」





「次のお休みに改めてご挨拶にいらして下さいな。それからアスランのご両親にもご挨拶を…」





「あ…あの…」






口を挟む暇も無く、ラクスは淡々と話し続ける。







「やっぱりドレスはオーダーメイドですわね。

 、今度一緒にデザインを考えましょう。」














結局はこうなってしまうのか…




誰よりも嬉しそうに結婚式の準備を仕切り始めるラクス…





アスランが深い溜息を吐いたのは言うまでも無い。


















【あとがき】

双子シリーズ、ようやくのプロポーズとなりました。

今回は邪魔が入らない〜!

何て思わせておきつつ…ラストはやはりラクスで締めさせて頂きました。

いっそシリーズものとして別枠を作るべきかなぁ…。


沙迦羅様、いつも素敵なリクエストをありがとうございます♪






2005.8.31 梨惟菜












TOP