「ねぇルナ!やめようよ!!」



「いいじゃない。しっかりプッシュしなくちゃ!」




強引にの腕を引くルナマリアはとても楽しそうで…



協力的と言われればそうなのかもしれないけれど。




今はそんな状況を楽しんでいられる気分でも無いんです!





「ね、まだ寝てるかもしれないじゃない?非番なんだし!」




「バカねぇ…あのザラ隊長がこんな時間まで寝てる筈無いじゃない。」




「ルナぁ〜」




















 勘違い




















コンコン…





「おはようございます、ザラ隊長。起きていらっしゃいます?

 宜しかったらご一緒に朝食、いかがですか?」




嫌がる私を他所に、ルナマリアはアスランの寝室をノックする。



…と言っても、アスランの部屋では無いのだけれど…。




昨日、議長がプラントから降りて来て…それで私達ミネルバの赤服は呼ばれて…。



これまでの戦績にお褒めの言葉を頂いて、こうしてお休みまで貰って…。



まさに至れり尽くせり…ってカンジ?



ホント、今回ばかりはシン様様です。


















「…?」



ノックしたけど返事が返って来ない…




「寝てる…のかなぁ?」



静まり返った扉の向こうから反応は無い。





その時…




ガチャッ!




勢い良く開いた扉の向こう側に、思わず目を見開く。






「ありがとう。でも、先にいらして下さいな。アスランは後でわたくしと参りますので。」





目の前に立つのは悩ましげな格好のラクス様…。



彼女越しに慌てた顔でこちらの様子を伺うのはアスラン…。




そうだった…


議長と一緒にいらしてたんだ…。




兵士達の前で堂々と歌う彼女の姿は輝いていて…。



あぁ…私が好きになってしまった人はこんな素敵な婚約者が居るのだ…と泣きそうになった。




ザラ隊長がミネルバに配属になって…毎日があまりに楽しくて…


すっかり忘れてた。



彼は、期待された道を歩んでいる人間なのだと…。




















「ミーア!」



「何?」



「何を考えてるんだ!君は!」



「だって…婚約者と久し振りに会ったんだもの…。ラクスさんだって…」



「ラクスはそんな事はしない!」



「しないの?何で?」


…はぁ…




久し振りにちゃんとしたベッドで眠ってしまった所為か、夜中の内に忍び込んでいた侵入者に全く気付かなかった。


朝起きたら隣にはミーアの姿が…。



勿論、それには驚いたけれど、それ以上にそれに気付かなかった自分に驚いた。



ここの所色々と疲れてたから…


だからって、いくら何でも軍人として迂闊過ぎた。




ミーア越しに驚いた表情で何も返せなかったルナマリアと…


その後ろに立っていた…。




コレは…彼女を間接的に傷付けた事に…




















「私、ザラ隊長の事が好きなんです。」




から告白を受けたのは一昨日の事。


真っ直ぐに迷いの無い瞳でハッキリと…。


本気なんだと…彼女の瞳を見ればすぐに分かった。




「あ、返事はいいんです。分かってますから。」




そうやって微笑む彼女の表情は何だか悲しそうで…。



結局、何も言えないまま…今に至る。





















「だから言ったのに…。」



「だって…まさか同じ部屋でなんて思わないじゃない…」



結局追い出される形で部屋を後にして…2人で食堂に…。


何だかカッコ悪い…。




「でもさ、何かいいカンジだと思ったのよ?と隊長。」



「え…?」



「まさかが告白するなんて思ってなかったし…。やるじゃない。」



「だって…」




言っておきたかったんだもん…。



振られるとは分かっていても…言っておきたかったの。





私達はいつ死ぬか分からない場所で生きているから…。







「ま、告白しただけでも立派よね。わたしだったら無理だもん。」




「玉砕必至の告白だったけどね…。」




















「はぁ…」




ラクス様の出発を見送るザラ隊長と…


それを遠目で見守る私とルナとシン…。




「ね、折角のオフなんだしさ、街行かない?」



「…私はいいや。気分じゃないし…。ミネルバに戻ってる。」



「え〜。1人で行ってもつまんないしなぁ…」



「シンと行けばいいじゃないか…。」




後ろから聞こえて来た声に反射的に振り返る。


そこにはザラ隊長の姿…。




「ザラ隊長はいいですよね〜。ラクス様ともお会い出来て…久し振りに…」



「ルナ!」



明らかに嫌味を籠めて言ったその一言。


「ルナマリア…彼女は…」


「いいんですよ。婚約者なんですもの…。」


「ルナマリア…今朝の事は…」


「済みません。朝からお邪魔しちゃって…次からは気を付けますから。」




言いたい事だけ言い切ったルナマリアは小走りで部屋へと戻って行く。



残された私とシンの身にもなって欲しいんだけど…。









「じゃあ…俺も戻りますんで!」



「ちょ…っ…シン!!」


















「今朝はその…済まなかった…」


「いえ…私達の方こそ、無神経でした。済みません。」



本当に…無神経…。


ルナには押せって言われたけれど…


彼からしてみたら、迷惑な事…だよね…。



婚約者が居て、他の女の子から告白されて…朝から押し掛けられて…





「では、私も戻ります。」



頭を下げて…なるべく顔を見ない様に背を向けた…その時…



「…へ…?」



不意に掴まれた腕…



「違うんだ…」


「え…?」


「彼女は…違うんだ…。」



困ったような…困惑したような…


何とも言えない表情でザラ隊長は私を引き止める。



やっぱりカッコいい…


整った顔立ちも…吸い込まれそうな瞳も…深みのあるその声も…。



全てを惹き付けて離してくれない。








「彼女は…元婚約者であって…今は違うんだ。」


「え…でも…」



「ちゃんと発表してないから…周りがそう思い込んでるだけで…。」


婚約者じゃ…無い?


でも…一緒の部屋だったし…

彼女はそうは思ってないみたいだし…。




「君からの告白…正直、驚いた。」


「あ…ごめんなさい…やっぱり迷惑でしたね…。」



「そうじゃないよ。嬉しかったんだ。」


「え…?」



「好きだって言われて…嬉しかった。」



フワリと…


自分と同じ色の軍服が抱き締める。








「本気で言ってるんですか!?」




あんな素敵な婚約者が居ながら…私の告白が嬉しかっただなんて、夢にしては都合が良過ぎる。






確かにザラ隊長は優しかったけれど、それは誰に対してもであって…



決して、私にだけ優しかった訳じゃない…。




「本気…って言うか…純粋に嬉しかったから…。」


「じゃあ…別に私の事が好き…とかじゃ無いんですね。」



「え…?」



少し腕の力が緩まった隙に、彼の胸をグイッと押す。




「同情なら…いりませんから…。」





今にも泣き出しそうな…悲しみを帯びた瞳…。




目が…離せない…





「ちょっ…!隊長!!」



再び、強く抱き締められた。


今度はそう簡単には逃げ出せそうにない強さで。




「止めて下さい!誰かに見られたら困るのは私です!」



言われるに決まってる…。


ラクス・クラインの婚約者に手を出すなんて…




「好きだ…。」



「…え…っ…」



「今、気が付いた。君が好きだ。」





「恋」などという感情に対して、深く考えた事なんて無かった。



所詮、恋なんて物は一時的な感情で…


ずっと一緒に居れば、いずれ変わってしまう気持ちなのだ…と。




だから、ラクスとの婚約を勧められた時にも別に何とも思わなかったし。


今の時代、結婚にそんな感情など…誰も抱いていないのだ…と。



だから、気にしていなかった。


思いもしなかった。




自分が、誰かを愛しいと想う気持ちを抱くなんて…。


誰にも渡したくないと…


自分を見て欲しいと…




そんな子供染みた独占欲が自分の中にあるとは…思わなかった。






「告白、嬉しかった。本当に。」



「隊長…」



「アスランで良い。そう呼んで欲しいんだ。」





その潤んだ瞳が俺を求めてくれる事が何よりも嬉しくて…


ミーアとの関係を勘違いされて離れてしまうのが怖くて…



恥ずかしいけれど、これが初恋なのだと…


そう言ったら君は笑うかな?





「アスラン…」



「何だ?」



「アスランが好きです。」



「ありがとう。俺も…が大好きだ。」













【あとがき】

個人的にちょっと笑いつつも邪魔したかったこのお話…。

流石にミーアはやり過ぎです!

我らのアスランの寝室に忍び込むとは…!!

アスランも迂闊だなぁ…と思いつつも、普段見れない彼の一面は萌え!

たまには可愛いアスランも見たいんです♪

そんな感じで、大分前から書きたかったのですが…遅くなってしまいました。

少しでも癒しになれば…はい…




こちらは参加させて頂いている「渡さない!同盟」に掲載させて頂いています。

アスミアですのでちょっと主旨は変わってしまうんですが…。




どうやらこの作品で200作目の様です。

丁度5万ヒットでもありますし…個人的にとても嬉しいのでフリー配布とさせて頂きます★





2005.7.25 梨惟菜










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