部屋から見える夜の海…
海沿いに立ち並ぶ建物から漏れる人工的な光…
このクライン邸に生まれた時からこの景色を見て育った私。
双子の姉に生まれ、両親や妹から愛されて育ち…
いつも幸せな気持ちだった。
毎日当たり前の様に見て来た景色が…明日、変わる。
「…まだ起きていらっしゃいましたの?」
開いたままの扉を軽くノックし、中を覗き込んだのは自分とそっくりの少女。
可愛い可愛い…双子の妹。
「うん。この景色も…明日からは見れなくなっちゃうんだなぁ…って。」
「あらあら…いつでも見にいらしたらいいじゃありませんか。旦那様と。」
名残惜しそうに窓の外を見つめる姉に、ラクスは微笑しながら答える。
「わたくしも寂しくなりますわ…がこの家を出て行ってしまったら。」
「いつでも遊びに来て。そんなに遠くないんだし。」
「そうですわね。」
「じゃあ…そろそろ寝ようかな。明日は早いし。」
「えぇ。しっかりとお休みくださいな。」
部屋の隅に飾られた純白のドレスを見る…。
自然と零れる笑顔。
そっと部屋の明かりを落とし、フカフカのベッドに身を沈めた。
鐘の鳴る丘で君と…
「準備はよろしいですか?」
控え室に座るはゆっくりと視線を入り口へ向けた。
普段、派手に着飾らないその顔にはメイクが施されている。
…と言っても、素顔でも十分に綺麗なに大げさな化粧は必要ない。
軽く…ごく自然に彩が加えられていた。
「まぁ…素敵ですわ。」
「あ…ありがとう。」
この日の為に考えて作ったオーダーメイドのドレスはにピッタリ。
勿論、が着る為だけに作られた、贅沢な一品なのだから当然。
「アスランがいらしてますわ。お通ししてもよろしいですか?」
「…うん…。」
「…」
ラクスに通され、控え室へと入ったアスランは妻となるの美しさに頬を染めた。
もまた…真っ白なタキシードに身を包み、普段とは違った魅力を見せる彼の姿に頬を紅潮させる。
「どうですか?アスラン…。」
「あぁ…凄く…綺麗だ。」
アスランがのウエディング姿を見て絶句するのも当然。
どうしても当日まで内緒にしておきたかったラクスの手によって、試着時でさえ同行させてもらえなかったのだ。
「折角ですし…お式が始まる前に写真を撮っておきましょう。」
どこからかカメラを取り出したラクスが2人を窓際に並ばせる。
見つめ合った2人は互いに笑顔で寄り添うように並んだ。
「アスラン・ザラ…汝は・クラインを妻とし、健やかなる時も病める時も…彼女を愛する事を誓いますか?」
「はい。誓います。」
「・クライン…汝は・ザラとなり、健やかなる時も病める時も…夫、アスラン・ザラを愛する事を誓いますか?」
「はい。誓います。」
パイプオルガンの音が響く小さな教会…
式に参列するのは2人と親しいごく僅かな人間だけ。
式は身内だけで…それが互いの希望。
両親の都合上、本来であれば議員だ何だと…大勢招待したい所なのだけれど…
それは式の後の結婚パーティーで派手に行われる事になっていた。
「それでは…誓いのキスを。」
牧師の合図で2人は向き合う形になる。
アスランの手が伸び…のヴェールをそっと上げる。
いつも以上に綺麗に着飾った…妻となる愛しい君に目を奪われ、息が止まりそうになる。
「…」
「…アスラン…。」
アスランに見つめられ…も恥ずかしそうに微笑む。
「愛してるよ…。」
愛の言葉と共に桜色の唇に贈られた…愛の口付け。
同時に湧き上がる祝福の拍手。
重ねられた唇に…彼女の瞳から一滴の涙が零れ落ちた。
「〜!おめでとう!!」
「ブーケ!こっちこっち!!」
風に舞うライスシャワー。
教会の入り口で、は手に持っていたブーケを高く投げる。
わぁ…っという歓声の中、風に流されたブーケはフワリとラクスの手の中に収まった。
「…幸せになって下さいね?」
「うん。次は…ラクスの番だよ?」
「あらあら…わたくしはまだ、当分先だと思いますわよ?」
「…そうなの?」
「アスランも…を宜しくお願い致しますわ。」
「はい。」
着飾った美男美女のカップル。
2人の顔は幸せいっぱいの笑顔。
「アスラン!アレやってよ!約束だったでしょ!?」
ラクスの隣に居たキラが嬉しそうにアスランに催促する。
「…アレ…?」
「アレってなぁに?」
何も知らないとラクスは首を傾げてその内容を聞くが…
キラはただニコニコしているだけ。
アスランもちょっと困ったような…照れたような表情で躊躇うが…
「…、ちょっとだけ我慢してくれ…。」
「え…?何…ひゃああっ!」
フワリと体が軽くなった直後…
目の前には青空。
「ちょっ…アスラン!?」
アスランによって、の体は軽々と抱き上げられた。
いわゆる…お姫様抱っこ…。
あまりの突然な出来事に戸惑いながら…周囲の冷やかしの声には真っ赤になる。
「…幸せになろうな。」
「…うん…。」
祝福の声と…鳴り響く鐘の音…
いつまでも鳴り止まないその音に促され…
もう一度だけ、2人は触れるだけのキスを交わす。
今日は特別な日だから…
いつまでも君と居ると誓った…大事な記念日。
【あとがき】
双子シリーズ、ようやくのゴールイン♪
今回は勿論、結婚式と言う事で…
沙迦羅様のご希望で「お姫様抱っこ」のオプション付き。
まぁ…ご希望が無かったとしても勝手に入れてたと思います。
タキシード姿のアスランにお姫様抱っこ…
激しく萌え!!
丁度リクも消化…という事で、このシリーズ、無事に完結でございます。
いかがでしたでしょう?
個人的には始まりから終わりまで…
少しずつ2人の気持ちを育めた感があるかなぁ…と。
結構気に入っています。
ここまで読んで下さってありがとうございました。
そして沙迦羅様。
素敵なリクエストをありがとうございました。
2005.9.10 梨惟菜