って…髪切らないの?」


「へ?何で?」




シホの唐突な質問にはポカンと口を半開きにして返した。




「だって…ジュール隊長が好きなんでしょ?」



「…っ///それと何の関係があるのよ!?」


図星だから…恥ずかしくて堪らない。

何で急に髪の毛の話になるのかが全く分からなかった。




「ウソ…あんた知らないの?」


「…だから何が…」



「ジュール隊長の好み、髪の短い子なんだって。」





















  彼好みの彼女






















「…!?」


その翌日…


に一番に遭遇したディアッカは驚きの声を上げた。


「何ソレ!?ヅラ!?」


「ち…違うよっ!!」



髪が…バッサリショートヘア…



の髪と言えば、ジュール隊女子の中で一番のロングヘア。


サラサラの金糸が眩しくて…

そんなにウットリする隊員も多かった。



そんなの髪の毛が…

肩よりも短く切り揃えられていた。




「…変?」


「変…じゃないけどさ…何で急に切っちゃったワケ!?」


「ちょっと…気分転換…かなぁ?」




今まで首や背中に纏わり付いていた髪の毛が無くなって…

何だか首筋が妙に涼しいんだけど…。


動き易いと言えば…そうかもしれないなぁ…。


切るのはかなり勇気がいったんだけど…。






「ん〜。なかなか…いいんじゃない?」


ディアッカがニヤニヤしながら、正面から…横から…

角度を変えながら凝視する。



「…やめてよ…何か恥ずかしいんだけど…」




「失恋…なワケないよな。」



古典的過ぎ…。



「だから、ただの気分転換だって…。」

















「おいディアッカ!何をしている!?時間はとっくに過ぎてるんだぞ!!」



時間に厳しいイザークが、廊下で女子と談笑しているディアッカを見逃す筈が無い。


「朝っぱらから口説くんじゃない!規律が乱れるだろうが!!」



朝から機嫌の悪いイザークは怒鳴りながら近付いて来た。





「…す、すみません!隊長っ!!」


ディアッカよりも先に答えたのは隣に居た女子。


金髪のショートヘア…


そんな部下が俺の隊に居たか…?




「…!?」


「あ!はいっ!!」



昨日まで長かった髪が…一晩で短くなっている。



「な?ビックリするだろ?俺も驚いてたとこなんだよな。」


イザークの視線にはパッと俯いた。




「どうした?急に髪など切って…。」


女の心境など良くは分からないが…


失恋をした女が髪をバッサリ切るという話は割と有名だ。



「いえ…あの…。」


「何だ?」


「その…好きな人が…短い髪の子が好みだって聞いて…」



そんな事言ったら…気付かれちゃうかな…私の気持ち。


恐る恐る顔を上げると…

隊長の顔は何とも言えない複雑な表情になっていた。




「そうか。」


「…」


無…反応…?



「集合の時間はとっくに過ぎている。急げよ。」





















今日の話題は、急に髪が短くなったの話一色。


反応は賛否両論。



清楚なイメージの彼女がショートヘア。


その姿も似合っていると喜ぶ男子…

やっぱり長い方が似合っていたとガッカリする男子…



そんな中、今日の隊長の機嫌は最高潮に悪くなっていた。





















「ビックリしたぁ。マジで切るなんて思ってなかったわよ。」



「…?」



が休憩室の近くを通り掛ると、シホの声が聞こえて来た。



、単純だもん。隊長の話出したら切るに決まってるじゃない。」


私の話…?


シホを中心に複数の女子が固まって話している。





「ホントは真逆なのにね。隊長の好み。」


え…!?


「これでライバルが1人減った…かな?」


「シホ、こわ〜い♪」
















あたし…騙されたの…?



シホの助言を真に受けて髪の毛を切ってしまった事を今更後悔したって遅い。


隊長の好みは…長い髪の女の子…?




ホントは切りたくなかったのに…

それでも、少しでも隊長の好みに近付きたかったから…






?どうした…?」


1人ポツンと廊下で佇むに気付いたイザークが声を掛けた。


「…っ…たいちょ…?」


振り返ったの瞳には涙が一杯溜まっていて…



「…っ…何を泣いている…っ」


「ごめんなさ…大丈夫…ですっ…」



一生懸命に涙を拭うの手をイザークが取る。


「何が大丈夫なんだ!?何があったのか話してみろ!」




「あ…たし…っ…知らなくて…っ…

 隊長の好みが…髪の短い子だって聞いて…でも…それは嘘で…っ…」





恐らくは自分でも何を言っているのか分からないのだろう。


見知らぬ内に口走っているというのに…。




「切らなきゃ…良かった…っ…ひっく…」



「…分かったから…泣くな。」



白がの視界を覆う…


イザークの軍服の袖がの涙を優しく拭っていた。






「隊…長…?」


まだ赤い瞼…

イザークは見た事も無い柔らかい笑顔でを見つめる…。



「顔が赤いぞ…」


「え…?…その…っ///」



そんな至近距離で見られてしまったら…

誰だって赤くなるに決まってる。






「別に俺は外見などは気にしないぞ?」


「え…?」


「要は中身なんだからな。」


「??」



混乱して無意識の内に口走っていた事に未だ気付いていないは首を傾げる。






「…ひゃっ!!」



急にイザークがの腰を引き寄せた。


ち…近いっ!!


「た…隊長!?」


「今日は特に重要な任務も無いしな…」


「はい?」




「…短い方が便利かもしれんな…」


の頬に手を添えたイザークが、唇を重ねて来た。


突然の感触にの体は硬直する…。





「俺の好みが知りたいのだろう?ゆっくり教えてやるさ。」



俺の部屋で…な。





















【あとがき】


シホちゃんが意地悪だ…。

いや、決して嫌いじゃないです、彼女。

…ってか、本編でもロクに喋ってない彼女を嫌う要素は無いんですけどね。

別に公式CPじゃないしさ…うん。

これで公式になるようなら…しばくけどね…。


えぇと…世羅様、お待たせ致しました。

こんなカンジです。

また感想いただければ幸いでございます。






2005.6.16 梨惟菜












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