「え…?仕事?」





「そうなんだよ。急に任務がはいっちまってさ。悪いな。」





帰って早々、ハイネの言葉にはがっかりする。




ハイネの赤い上着を受け取ったはキュッとそれを抱き締めた。






「あ…お風呂、先に入る?」




「あぁ…そうする。」




















 帰る場所





















「お店…予約しておかなくて良かったね。」





「ん?そうだな…。」





何だか…会話が弾まない食卓。




言葉よりも、食器のぶつかる音の方が聞こえるのも珍しい。




それくらい、食事の時間帯は賑やかなのに…。






「ハイネ…」




「何だ?」




「気にしないでね?明日の事。」









気遣うべきなのは自分の方なのに…と、ハイネは気まずそうな顔でを見つめる。








「ホラ、私の誕生日だったら激怒しちゃってたかも…だけどね、明日はハイネの誕生日なんだし…。

 ちょっと…寂しいけど。お仕事じゃ仕方ないでしょ?」






寂しそうに微笑みながら、はまるで自分に言い聞かせるかの様にハイネに告げる。








「ホント…は聞き分けの良い奴だな…。」




もっと我侭を言ってくれても良いくらいなのに…。




「ハイネを困らせる我侭は言いたくないだけ。」




ここで駄々をこねても困るのはハイネ。



ハイネは責任ある立場であって…人の上に立つ人なんだから。



忙しいのは最初から分かっていた事なんだもん。








に寂しい思いをさせたくなくて同棲を始めたのにな…誕生日に1人にしてたら意味無いよな…。」




「だから気にしないでって言ってるでしょう?それも承知の上で一緒に居るの!」







そうやって…いつもばかりが損をしている気がする。






「じゃ…今日は可愛いちゃんにサービスしてあげよっかなぁ〜♪」




急に笑顔になったハイネがをひょいっ…と抱き上げる。




こういう時のパターンは決まってる。





ホント…ハイネはお調子者なんだから…。











「だぁめ!明日も早いんでしょう?仕事に差し支えます!」





寝室に運ぼうとしたハイネの頬をグイッと押さえた。





「…大丈夫だってば。俺、そんなにヤワじゃないぜ?」




「…駄目ったら駄目!」




この体勢から抜け出すのも慣れたもの。



「疲れが出たら大変でしょ?さっさと休む!明日は何時?」





枕元の目覚ましを手に取り、時間をセットしようと操作を始める。






「なぁ…ちょっとだけ…な?」





懲りないハイネは後ろからをフワリと抱き締めた。





「…ハイネの方が我侭ね。」




「あと30分で誕生日だし?」




あと30分で9月19日…



ハイネの誕生日…






ハイネはお休みを申請していて…明日は2人でのんびり過ごす予定だった。




レストランで食事でもしようか…って話も出たんだけど、家でのんびりしたいってハイネが言って…。




張り切ってご馳走の準備もしてたんだけどなぁ…。





プレゼントだって…一緒に買いに行きたかったのに…。




でも、我侭は良くないよね?




折角一緒に住んでるんだもん。



忙しいハイネの支えになりたくて一緒に住む事にしたんだもん。




ハイネが宇宙で頑張ってる間は、私がこの家を守らなくちゃ。


















「ね…プレゼント、何が欲しい?」



「プレゼント?」




「明日、一緒に買いに行こうと思って何も買ってないの。だから明日行って来ようかなぁ…って。」




「う〜ん…。」





何か欲しい物は無いかと問われ、ハイネは考え込む。





「それとも…別のお休みの日に一緒に買いに行く?」




「そうだな…その方がいいな。」




「じゃ、そうしよっか。」






抱き締められたまま、ハイネの声が耳元で響く。






「じゃ…今日の所はを…」




「はい?」




「プレゼント♪」




「ちょ…何考えてるのよ〜!」




「そりゃあ当然…の事♪」





















「ん…」





カーテンから零れる陽射しに目を細める…。



何だかだるくて…体が重たい。




枕元の時計に手を伸ばし…時計を確認すると時刻はまだ5時。






「腰…痛い…」





ちょっとだけって言ったくせに…ハイネの嘘吐き…





「ハイネ…朝…」



隣で眠るハイネを起こそうと、そっと体を揺する。




軍で鍛えた締まった体はまだ温もりを宿していた。







「ん…もうそんな時間?」






ハイネは気だるそうに体を起こす。




「……おはよ。」




「ひゃ!」




腕を引かれ…再びベッドに体を沈める。




「あ〜このまま休みてぇ〜。」





折角の誕生日なのに何で仕事なんてしなきゃいけないんだよ…。






「…ハイネ。ハッピーバースデー。」





「…サンキュ…」





耳元でバースデーソングとお祝いの言葉を囁く。



これは私だけの特権。




一番におめでとうを言いたくて…言えて…


こうして一緒に過ごせる幸せ…あなたにしか感じる事は出来ない。








「…じゃ、の手料理とケーキと…盛大なプレゼントは後からのお楽しみってな。」





「そうね。早く支度しなくちゃ遅刻するよ?」





「…一緒にシャワー浴びる?」



「浴びません。」




「…即答かよ…」




















「…じゃ、行ってらっしゃい。気を付けてね。」




「あぁ。行って来る。」





こうしてハイネを送り出す瞬間が一番寂しい。



ハイネの後姿が見えなくなるまで見送って…その姿が消えた瞬間には泣きそうになる。




無事に帰って来ます様に…



そう願う事しか出来ない自分が無力に思えて仕方が無い。






でも…待つって決めたから。




泣かない…ハイネの前では絶対に泣かない。








「ハイネ…」




「ん?」






背の高いハイネに向かって背伸びをして…




腕を彼の首に絡めて…そっと口付ける。








「…ハイネの帰る場所はここだからね?」




「…分かってるよ。」








帰って来たら…2人だけで誕生日のパーティーをしよう。



テーブルには沢山の料理と…大きなケーキ。




ちゃんとネーム入りのプレート、用意しておくんだから。



それから一杯キスをして…



そうだなぁ…ハイネの言う事、聞いてあげてもいいかな…?




誕生日は特別だからね…。





何日遅れても…一緒にお祝いしようね。






言葉にしたい想いを飲み込んで…今日も彼の背中を見送る。




その背中に『愛してる』って呟きながら。























【あとがき】

ハイネのお誕生日夢でした〜。

本当は書こうかどうか…相当悩んだのです。

ハイネ夢…難しいんだもん。

でも記念日ですしね。

ハイネ、西川さん、お誕生日おめでとうございます〜♪


ちょっとこのハイネは…何て言うかね…エロ?

ちょっと甘えんぼな感じになっちゃいました。

年齢的に他のキャラに比べれば大人キャラに分類されるとは思うのですが…

たまにはこんな彼も良し…かなぁ…と。

やっぱハイネ、苦手だわぁ〜。


…という訳で、読んで下さってありがとうございました♪

次のお誕生日はアスランですね〜。

ひゃっほう〜♪(変)




2005.9.19 梨惟菜











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