穏やかな風と 穏やかな陽射・・・


そして愛しい君の笑顔と歌声。



それだけで十分幸せなんだ・・・



この幸せな時間が永遠に続けばいい。




それが、俺のささやかな願い・・・







戦場の歌姫


歌姫の弱点
















「キラ、ここに居たのか・・・。」



「あ・・・もしかしてアスランも追い出された?」



「あぁ。ラクスには敵わないな・・・。」




穏やかな笑顔で海を仰ぐキラの隣に腰掛ける。


海から流れ込む潮風が少し伸びた髪を揺らす。





戦争が終わって、地球へと降りて来て2週間・・・。


オーブは恐ろしい程に穏やかな場所だった。








色々と手続きの関係上、しばらくここで暮らすようにカガリから言われ、
俺とはキラとラクスの住むマルキオ氏の家で世話になっている。





色々考えた末でにプロポーズをして、一緒に付いてきてもらったけれど、
亡命した俺達にとって、結婚はそう簡単な問題じゃない。




結局、未だに婚約という形のままの俺達。




俺達に与えられた時間はまだたくさんあるから・・・


これからの長い月日をと共に過ごせるのならば、こうして待つのも苦にはならない。









「で?今日は何をしているんだ?」



理由も聞かされないまま、俺はラクスに追い出された。



『しばらくキラとお散歩でもして来て下さいな。』




ニッコリと微笑んでの顔を見る間もなく外に押し出されたのだ。








「料理を作るって言ってたみたいだよ。」


「料理?いつも作ってるじゃないか。」



それだけの理由で俺達は追い出されたのか?




「今日はが作るんだって。」


・・・が?」




キラにそう言われ、俺は腕を組んで考え始めた。




が料理・・・



そう言えば、今まで見た事無かった気がする。






長い髪を一つに束ねてエプロンを着けたの姿。






・・・か・・・


可愛い・・・








「・・・アスラン?」


「え?」



「どうかした?顔が赤いけど・・・」



「え!?いや、何でも無いんだ!!」







何を考えてるんだ俺は・・・


これじゃただの危ない奴じゃないか・・・





でもそんな姿見せられた日にはヤバイ・・・


が俺の奥さんになったら、その光景が当たり前になるんだよな・・・。





そう思うといてもたってもいられず、立ち上がった。



「アスラン、どこ行くの?」


「え・・・?を見に・・・」


「ラクスが入れてくれると思う?」


「・・・だよな。」






大体、何で内緒にする必要があるんだ?


もしかして、今日は特別な日か何かか?




色々と模索してみたが、思い当たる節は無い。


俺の誕生日もまだ先だし・・・。


の誕生日はもっと先だ・・・。







「ねぇ・・・アスラン・・・。」


「ん?」


「何か、焦げ臭くない・・・?」


















!大丈夫ですかっ!?」



「やだ!何これ!!何で焦げてるのぉ!?」





家の中は煙が充満していた。



お姉ちゃん、すごい臭いがするよぉ・・・。」



周りで様子を見ていた子供達が涙目で訴える。



「ごっ・・・ごめんね?何か失敗しちゃったみたい・・・。」


「皆で窓を開けて来て下さいな。」




ラクスの一声で子供達が家中の窓を開け始める。







「ちょっと火が強過ぎたみたいですわね。もう一度やり直しましょう?」









アスランとオーブへ来て2週間。



ここではいつもラクスとキラのお母さんが食事を作っていた。


来てから色々と忙しくて・・・


ようやく落ち着いて来たから私もお手伝いしなくちゃ・・・と思った矢先、
料理をした事が無い事にようやく気が付いた。





私、本当に女の子なんだろうか・・・





よくよく考えてみると・・・

食事はいつもメイドさんが作ってくれてたし・・・


お母様が趣味でよくお菓子を作ってくれたけれど、手伝った記憶も無い・・・





私はというと・・・

普段は歌っているかピアノを触っているか、庭でお花の手入れをしているか・・・




ダメじゃん・・・




こんな事でアスランの奥さんが務まるワケないじゃない・・・。



アスランだってお金持ちの1人息子だったんだから、美味しい料理ばかり食べていたに決まってる。



料理も作れない奥さんだなんて・・・失格じゃない・・・













「何かあったのか!?」




もの凄い剣幕でアスランとキラが飛び込んで来た。



煙が外まで届いてたみたい・・・。



「・・・・・・??」






アスランは焦げたフライパンを持つを見て首を傾げた。



、少し休憩にしましょう?」



エプロンを外したラクスは、キラと子供達を連れて外へ出て行った。











「何か私・・・お料理出来ないみたい。」


「もしかして・・・作った事無かった・・・とか?」




十何年も一緒に居て、がキッチンに立つ姿を見た事が無いなんて・・・


そう思って一生懸命思い出していたんだけど、どうしてもそんな記憶は無くて・・・。



は恥ずかしそうに頷いた。




「女の子なのに料理も作れないなんて・・・情けないよね・・・。」




が真剣に落ち込んでいる。


やっぱり・・・料理って女の子の夢・・・なのかな?


確かに俺の憧れでもあるんだけど。



彼女の作ったお弁当を持って一緒に出掛けたり・・・


記念日には手作りのケーキでお祝いしたり・・・。






確かに一緒に居る時間は長かったけれど、恋人としてはまだ始まったばかりの俺達。







「もしかして・・・卵焼き作ってた?」


「え?何で分かったの?」



ハッキリ言って、フライパンを見る限りでは何を作っていたのか見当もつかない。


それくらいに真っ黒に焦げているのだ。



「卵、顔についてる。」


「え・・・?ひゃっ///」



頬についていた卵の黄身をアスランが舐めた。



「やだ・・・もうっ。」



突然の不意打ちに頬を赤らめるが愛しくて・・・。


アスランは思わずをギュッと抱き締めた。





「練習すれば上手くなるよ。だから大丈夫。」


「そうかなぁ・・・。」


「まだ時間はたっぷりあるんだから・・・な?」


「うん・・・。」










「ホントはね、ロールキャベツが作りたかったの。」


「ロールキャベツ?」


「うん。アスラン好きでしょう?」



「覚えててくれたのか・・・。」


「当たり前じゃない。」






好きな人の事なら、どんな些細な事でも知っておきたいのよ?


そう言って微笑む


「じゃあ、楽しみにしてる。」


「いつになるか分からないけどね・・・。」



「まぁ、今日の所はの可愛いエプロン姿が見れたから良しとするか。」


「もう・・・アスランの馬鹿///」










「決めた!私、ロールキャベツをマスターするまではアスランと結婚しないから!」


「ええっ!?」



勝手に意見表明するにアスランは激しい動揺を見せた。




「いや・・・別に結婚してから練習すればいいじゃないか・・・。」


「ダメ!新婚初日にロールキャベツ作るのが夢なんだもん!!」





待ってくれ・・・


それはいつの話になるんだ・・・?

















【あとがき】

『戦場の歌姫』終了後の作品第一弾になりました。

ヒロインに意外な弱点発覚!!

・・・ってツッコミたいんです。

お前、料理くらいしろよ・・・と。

でも弱点はどこかしらあると思うんですよ。

なので、このヒロインちゃんの弱点は料理。

しかも卵焼きすら作れない極端な下手っぷり。

さぁ、ロールキャベツが作れるようになる日はいつの事やら・・・。



珠琉様、お待たせ致しました。

アスランのほのぼの甘夢です。

ってか・・・これギャグ?

ギャグなの・・・?

ごめんなさい。

出来る限りほのぼの・・・甘めにしたつもりなんです。



では、他の作品も読んで頂けると嬉しいです。





2005.3.16 梨惟菜





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