「えっと…これでいい…かな?」
「?何をしていらっしゃいますの?」
ある日の朝…
キッチンで何かゴソゴソと探し物をしている。
「あ…ラクス…」
の手の中にはカゴ…
カゴの中には果物や食材が入っていた。
「どこかへお出掛けですの?」
「あ…うん、実はアスランが体調崩しちゃったみたいで…。」
「まぁ…ではお見舞いに?」
「うん…。」
癒しの手
「…え…?」
「あ…ごめんなさい。どうしても…って…。」
今日は婚約者のと買い物に行く約束をしていた。
初めてのデート以来、月に2回のペースで外へ出掛けていたが…
今朝目を覚ましたら…自分の身体に感じた異常…
体温計は…38℃をさしていた…。
「38℃…?大変…ちゃんと寝てなくちゃ…」
に押され…身体をベッドに沈める。
「、ここは僕に任せてキッチン借りたら?」
「あ…アスラン…キッチンをお借りしても良いですか?」
「え…?あぁ…構わない…けど」
「じゃあ、すぐに食べる物作りますから…待ってて下さいね。」
ニッコリと微笑んだは部屋を出て行った…。
「…良い子だよね…」
「…で?何でキラまでここに居るんだ?」
そう…
への断りの電話を入れた時、彼女から嬉しい返事が返って来た。
『じゃあ…お見舞いに行っても良いですか?』
そりゃあ普通は…彼女1人で来てくれると思うだろう?
…実際のお客様は3名様…
「僕だって…折角の休日なんだからラクスと2人で出掛けたかったんだけど…。」
首謀者はやはり彼女か…
相変わらず…が大事なのか…それとも俺で遊ぶのが好きなのか分からない人だ。
けれど、と同じ顔…
彼女を前にしたら文句も言えなくなってしまう…。
「アスラン…早く良くなってよね。じゃないと僕が困るんだから。」
「俺だって困るよ…。」
「あ…キラ…アスランは?」
「うん。寝ちゃったよ。」
「そう…。」
寝室から出て来たキラはリビングのソファに腰を下ろした。
「アスランのお家…こんなに広いのに使用人さんは居ないのね…。」
改めてグルリ…とリビングを見渡したは余りの広さに溜息を零した。
「クライン邸も十分広いよ?」
「そうだけど…家には沢山の使用人さんが居るもの…。」
「ここにも普段は居るんだよ。でも休日はのんびり過ごしたいからって…誰も来ないようにしてるんだって。」
「そう…なんだ…良くご存知なのね…。」
「アスランとは子供の頃からの付き合いだから…。」
初めてお邪魔したアスランの自宅は…何だか寂しそうな雰囲気。
お母様を早くに亡くされて…
お父様はお仕事で忙しくて滅多に戻られないとか…
こんな広いお家に…1人なんだ…。
リビングから見える、綺麗に整備された庭園…
部屋も綺麗に掃除されていて…完璧。
でも…何だか物悲しい…
「さぁ…キラ、わたくし達はお先に失礼しましょう?」
悲しそうな表情で俯くを見たラクスがエプロンを外し、立ち上がった。
「え?ラクス…?」
「折角ですもの…ここからはお2人の方が宜しいでしょう?
、帰りは家に連絡をして迎えを呼んで下さいね?」
「あ…うん…ありがとう。」
「それでは…ごゆっくり。」
手早く荷物を纏めたラクスは、キラの意見など聞かずに玄関へと歩き出していた。
「ちょっ…ラクス! 、またね!」
「はい…お気を付けて…。」
1人になったは、キッチンへと戻る。
ラクスに手伝って貰って作った料理が湯気を立てていた。
でも…今眠ってしまったばかりなのよね…。
お鍋に蓋をしたは、エプロンを外してアスランの部屋へと向かった。
…まだ…熱い…
ベッドで眠るアスランの額に手を当てると、まだかなりの熱を帯びていた。
頬を赤く染め…汗が滲んでいる。
苦しそう…。
こんなアスランは初めてで…凄く心配。
良く考えたら…今日は誰もお世話をしてくれる人が居ないのよね…。
氷水でタオルを冷やし、絞った後にそれを額へと乗せる。
「…ん…」
ピクリ…と眉を動かしたアスランが瞼を開けた…
「ごめんなさい…起こしちゃった…?」
まだはっきりとしないぼやけた視界にの声が響く…
「…?」
「お粥作ったんだけど…食べれる?食べて薬飲んだ方がいいと思うんだけど…。」
「…あぁ…ありがとう…」
「じゃあすぐに持って来るね…。」
嬉しそうに微笑んだはパタパタとキッチンへ降りて行った。
部屋に残る…の甘い香り…
珍しく、キラとラクスが静かだな…
そんな事を考えながら、ひんやりと冷えるタオルを頬に当てた。
「お待たせしました。」
暫くして、トレイにお鍋を乗せたが戻って来た。
「…起きれる?」
「…あぁ。大丈夫…。」
サイドテーブルにトレイを置いたが起こすのを助ける。
「今温め直したから少し熱いかもしれないの…。」
蓋を開けると、お粥と一緒に甘い香り…
「あ…お米だけだと味が薄いと思ったから…お芋入れてみたの。」
お粥を掬ったは、フーッと息を吹き掛けた。
「はい。」
そのまま…それをアスランの口元に運ぶ。
「…え…?」
「口…開けないと食べられないわよ…?」
これは…食べさせてくれる…って事か…?
「アスラン…?顔が赤いけど大丈夫…?」
また熱が上がっちゃった…?
心配そうに覗き込む…。
思いも寄らないのサービスに頬が熱くなる。
「大丈夫よ。ちゃんと冷ましたから…ね?」
「…あ…あぁ…」
差し出されたお粥を…口の中に運んでもらう。
口に広がる…甘みを含んだお粥の味…。
「…美味しい?」
「…美味しいよ…。」
「良かった…しっかり食べて早く良くなってね。」
食事を終え…着替えを済ませ…
の持って来てくれた薬を含んで再び横になる。
「…眠るまで傍に居てもいい?」
ベッド脇に座り込んだが、問い掛けた。
「…あぁ…。」
そう返すと、はそっと手を握る。
「まだ…熱いね…。」
「大丈夫だよ、今薬も飲んだから…きっと明日には良くなるさ。」
「うん。」
もう片方の手が…髪の毛へと伸びる…。
そっと優しく撫でるように、一定のリズムで…
眠気を誘われ…次第に瞼が重たくなって来た…。
「…俺は大丈夫だからそろそろ帰った方が…」
「大丈夫。ちゃんとアスランが眠ったら帰るから…。ちゃんとお迎えの車も呼ぶし…。」
だからそれまで傍に居させて?
寂しそうにがお願いする…。
断れる筈が無い…。
彼女を遅くに帰すのは心配だけど…彼女にお願いされるのが一番弱い。
「お休みなさい…アスラン…。」
囁くような声を子守唄に…アスランは深い眠りに就いた…。
「ん…」
再び目を覚ますと、外はまだ暗かった。
だいぶ楽になった…。
一度起き上がろうとしたその時…まだ手に残る温もりを感じる。
「え…?」
俺の手を握ったまま…がベッドに顔を埋めて眠っていた。
慌てて時計に目を向けると、時計は夜の11時を指している。
まずい…!
彼女をこんな時間まで帰さなかったら、ラクス嬢に何を言われるか…!
けれど、は気持ち良さそうに眠っている。
を起こさないように…アスランはそっと枕元の携帯を手に取った。
『あら…アスラン?もう大丈夫ですの?』
「えぇ…お陰様でだいぶ…それで…が眠ってしまって…」
迎えをよこして貰えませんか…と頼もうとしたのだが…
『あらあら…遅いと思いましたらってば…。済みません。
では、明日の朝、迎えの車を伺わせますわね。』
「…えっ…!?」
今すぐに来てくれるんじゃないのか?
『は一度眠ってしまうとなかなか起きませんの。
ですから…をお願いしますわ。』
スヤスヤと眠るを…隣の部屋へと運んだ。
抱き上げても彼女が目覚める気配は無い。
ラクス嬢の言った通り…一度眠ってしまうとなかなか起きないらしい。
「お休み……今日はありがとう。」
額へ口付けを落とし…部屋の明かりを落とした。
【あとがき】
沙迦羅様からの恒例の『Twins』シリーズです。
今回は、体調を崩したアスランを見舞うヒロイン…
…に加え、定番のキラとラクス参戦です。
ちょっと今回はお邪魔控え目で…いかがでしたでしょう?
更に個人的な好みで、『フーフーしてあ〜ん♪』付きにしてみました☆
もはや個人的妄想を含みまくりです。
沙迦羅様、いつもありがとうございます。
2005.8.12 梨惟菜