「アスラン!こっちこっち!!」
アスランが公園に入ると、噴水の前でが手を振って名前を呼んだ。
「ごめん!待った?」
「ううん。私もさっき来た所だから大丈夫。」
水色のワンピースをヒラヒラと揺らしながら、がアスランの元へ駆け寄る。
「私の方こそごめんね?折角の休暇なのに…。」
「そんな事ないさ。の家、楽しみだよ。」
アットホームファミリー
と付き合い始めて4ヶ月…。
今日は初めて彼女の家を訪問する。
訪れるきっかけになったのは、先日の話…。
「あのね、アスラン。」
「ん?どうした?」
「今度のお休み、家に来てくれないかな?」
「いいけど…何かあるのか?」
からこんな話を切り出すのは初めてで、アスランは読んでいた雑誌を閉じての顔を見た。
「パパにね、話したの。付き合ってる人が居るって…。」
「えっ…?」
「そしたら、会ってみたいから連れて来なさいって…。」
「ここ?」
「そう。アスランのお家に比べたら大分小さいけど…。」
の家は可愛らしい一戸建ての家だった。
庭には色んな花が咲いていて…
門をくぐると、小さな子犬が2匹、の足元に駆けて来る。
「ココア、ショコラ、ただいま。」
笑顔で2匹の犬を撫でるは凄く楽しそうで可愛い…。
「犬の名前…?」
「そう。2匹とも茶色いからショコラとココア♪」
らしい可愛いネーミングだな…。
「両親と3人暮らしだったよな?」
「うん、そう。部屋余ってて結構広く感じるのよね…。」
庭を通り抜け、玄関に差し掛かると、が先立ってドアをゆっくりと開けた。
のご両親はどんな人なのか…。
こんなに可愛い娘が育ったんだから、きっと優しい方に決まっている。
でも、緊張するのは当たり前で…
何たって、彼女の両親なのだから…。
「ただいま〜」
「「おかえりぃ〜〜〜!!」」
「なっ!!」
玄関を開けると同時に飛び出して来たのは、2人の男女。
…両親にしては若すぎる…よな?
「うわ!マジでアスラン・ザラだ!!」
「!大物捕まえたわねぇ〜♪」
状況の掴めない俺は、その2人が何者なのか分からないまま…
ただぼんやりと眺めているだけ…。
「な…何でお姉ちゃんとお兄ちゃんがここに居るのよ!!」
「の姉のマリアで〜す。」
「兄のカイルです。初めまして。」
「は…初めまして…アスラン・ザラです。」
「双子なの。もう家を出て独立してるから普段はここに住んでないんだけど…。」
「今朝パパから電話があって、が彼氏連れて来るから見に来いって♪」
「やっぱりパパか…」
溜息をついては頭を抱え込む。
客間へと続くドアに手を掛けたは、振り返ってアスランに念押しした。
「アスラン、ウチのパパ、緊張するような相手じゃないから安心してね?」
「え…?あ…あぁ。」
「初めまして。から話は聞いてるよ。」
「お会い出来て嬉しいわ。」
のご両親はとても気さくな方で…。
は母親似だった。
思っていた以上に若いみたいだし…。
何だか未来のを見てるみたいで…
でもやっぱり緊張はしてしまう…。
折角のお母さんが入れてくれた紅茶の味もうろ覚えだった…。
「ね、そろそろ部屋に行ってもいいでしょう?」
「そうね。私も夕食の支度をしなくちゃ。アスラン君も食べて行ってね。」
「あ…すみません。」
「じゃ、アスラン、私の部屋に行こ♪」
「…って、何で2人も付いて来るの!?」
何故か姉兄も一緒に付いて来る。
「だって…私達もアスランとお話したいじゃない?ね?」
「はいつも独り占めしてるからいいだろ?」
「そういう問題じゃないわよ!」
「ね、アスランはの何処が気に入った訳?」
「、軍でどんなカンジ?可愛いからモテるだろ?」
「…はぁ…」
「ちょっと!私の事無視しないでよ!!」
2人の質問攻めに合い、困惑するアスラン。
一方、は困った表情で2人を睨み付けるが、全く動じていない。
結局、2人きりになれないまま、陽は傾いて行った。
「ご馳走様でした。」
の母の手料理でお腹を満たしたアスランの前に、食後のコーヒーが置かれる。
「すみません。色々とご馳走になってしまって…。」
「いいのよ。いつも軍ではが迷惑ばかりかけてるでしょう?
この子、しっかりしてるように見えてドジだから…。」
「いえ…そんな事は…」
「ママ!あんまりアスランを困らせないで…わっ!」
がテーブルの上に置いたコーヒーのグラスを倒してしまった。
「うわっ!」
グラスの中のコーヒーは、勢い良くアスランを直撃する。
「やだっ!ゴメン!!」
は慌ててハンカチを取り出し、アスランのシャツに広がるシミを取り除こうとしたが…
アスランの白いシャツは茶色いシミを広げていくばかり。
「、無理に擦ったら逆効果なのよ。」
幸い、アイスコーヒーだったから火傷の心配はなかったものの…
このまま帰す訳にはいかない…。
「ママ…アスラン、今夜泊まって貰っていい?」
「えっ…!?」
「そうね。今から洗濯すれば一晩で乾くだろうし…。アスラン君、そうしてもらっていいかしら?」
「えっ…いや…その…」
「アスラン…大丈夫かなぁ…」
寝間着姿のはクッションを抱きかかえたまま、ベッドに転がる。
「何が?」
に問い返すのは、の部屋に泊まる事になった姉。
「今頃お兄ちゃんに苛められてないかなぁ…って。」
「大丈夫よ。ああ見えてカイル、弟が欲しかったんだから。」
「妹で悪かったわね。」
「私は妹で良かったわよ?一緒に買い物出来るじゃない?
さ、明日早いからもう寝るわね。」
「…?」
「あ…アスラン。どうしたの?眠れない?ひょっとしてお兄ちゃん、イビキとか煩い?」
静まり返った深夜…
アスランが部屋の窓から外を覗くと、庭にの姿が見えた。
何をしているのか気になって降りて来たのだけど…
「部屋からが見えたから…。」
「そっか。」
「眠れないのか?」
「うん。何となく落ち着かなくて…。」
「の家族、いいな。」
「…そう?騒がしいでしょ?」
「あぁ。でも温かいよ…。」
「そう…かな…。」
「が素直で可愛く育った理由、何となく分かる。」
月明かりに照らされて柔らかく微笑むアスランに魅入ってしまったは、頬を赤く染める。
青白い光が幻想的で…綺麗な顔立ちのアスランをより一層美しくした。
「……?」
急に自分の胸へ凭れかかって来るに愛しさがこみ上げるアスランは、そっと肩を抱き寄せた。
「全然2人っきりになれなかったんだもん…。」
「そうだな…。」
「今度からは外でデートしようね?」
「そんなに2人きりがいい?は甘えたがりだな…。」
「アスランが大好きなんだもん。」
けど、の家族…羨ましいと思ったんだ。
が愛されて育ってるのが凄く伝わって来た。
俺も将来…みたいな可愛い娘が欲しいな…
…なんて言ったら照れて怒られそうだから…。
今日は止めておこう。
【あとがき】
ちょっとギャグ風な…
こんなお話書いたの久し振りです〜。
書いてて楽しかった。
最後にはちょっと甘めに…です。
10万Hitのお礼としてフリー配布させて頂きます。
もしも持って帰ってやろう!なんて奇特な方がいらっしゃいましたら、掲示板もしくはメールにてお知らせ下さい。
無断でのお持ち帰りはご遠慮願います〜。
では、10万Hit、本当にありがとうございました。
これからも末永くお付き合い頂ければ幸いです。
2005.11.6 梨惟菜