ピピピピッ・・・




「ん・・・」




部屋のアラームに微かに反応したは、ゆっくりと手を伸ばした。



手探りでアラームを止めようとするが、体が思うように動かない・・・。



体が重い・・・。



無重力空間の筈なのにこの気だるさは何なんだろう・・・。















 戦場の歌姫


    〜歌姫の休日〜












・・・?」




いつもの時間になってもがブリッジに来ない。



時間はしっかりと守る子だ。



そんなが遅れてくるなんて・・・。





心配になったアスランは、の様子を見に部屋へと足を運んだ。




薄暗いままの部屋。


部屋には窓も無い為、明かりを点けないと常に真っ暗だ。


・・・と言っても、宇宙空間だから窓があっても無意味なのだけれど。






・・・?」



いくら恋人とはいえ、互いの想いが通じ合ってまだ間もない。



正直、彼女の部屋に無断で入るのは悪いとも思ったが、
いくら呼び掛けても反応が無いのだから仕方が無い。




アスランは入り口のライトを点けると、ゆっくりとベッドへ体を運んだ。








はまだ寝ていた。



珍しいな・・・。



昨夜眠れなかったのだろうか・・・。





、朝だぞ。そろそろ起き・・・」




静かに眠るの頬に触れた瞬間、
の頬が異様に熱を持っていたのに驚いたアスランは慌てて手を引いた。




「・・・!?」



「ん・・・アス・・・ラン?」



頬に触れられるまで人の気配に気付かなかった・・・。


仮にも軍人なのに・・・



、熱があるじゃないか・・・。」


「え・・・?」




道理で体が言う事を聞かないと思ったら・・・。




「皆には言っておくから、今日はゆっくり休むんだ。」



一生懸命起き上がろうとしたの体を、アスランはしっかりとベッドに押さえ付けた。




「・・・ごめん。」



再びベッドに体を預けたは、ゆっくりと瞼を落とした・・・。














「・・・困ったな・・・。」





ただでさえ人手不足な戦艦に医師は居ない。



以前、ヴェサリウスでもは倒れて熱を出したが・・・。


あの時は医者だって居たし、正直俺は側に居ただけで何もしていない。







「まぁ・・・が熱ですか?」



「えぇ・・・それで・・・」



とにかく、こういう場合は女性の方が詳しいだろう。

そう思って、ラクスに説明しながら相談しようとした。




「それは心配ですわね。今日はアスランもの看病をして下さいませ。」



「え・・・あぁ・・・」




どうしたらいいのか相談する間も与えず、ラクスは行ってしまった。




カガリじゃ宛にならないだろうしな・・・。




とにかく、熱を下げないといけないんだよ・・・な?








プシュー



宇宙空間だと足音に気を遣わないでいいから便利だと思った。


まだ眠っているだろうから、物音はあまり立てたくない・・・。




静かな部屋にはの寝息だけが規則正しく響く。




しっかりと冷やしたタオルに氷枕・・・。


それを抱えたまま、再びの額に手を当てた。





あれ・・・?



さっきより熱くないか・・・?



熱が上がってる・・・?





の頬は真っ赤で、額からは汗が滲んでいた。



これってヤバイのか・・・?






・・・とにかく冷やそうと思ったアスランは、の額にタオルをしっかりと固定し、
の頭を上げて、氷枕を挟んだ。




一緒に持って来た薬をベッドサイドに置き、熱を持ったの手を握る。





これで熱が下がればいいけど・・・。



アスランは不安そうな表情で苦しそうに眠るの顔を見つめた・・・。


















しっかりと冷やしたタオルもすぐにぬるくなってしまい、の熱は一向に下がる気配は無い。



薬も飲ませたけれど、効果は表れないし・・・。





誰か・・・頼れそうな人は居ないのか・・・?





「あ・・・アスランさん・・・。」



そこへ通り掛かったのはミリアリアだった・・・。




さん、熱があるんだってね。大丈夫?下がりそう?」




心配そうに問い掛けてくるミリアリア・・・。



「ちょうど良かった。聞きたい事があるんだ。」




この子なら頼れそうだと判断したアスランは、ミリアリアに相談する事にした。















「何も食べさせてないのに薬だけ飲ませたって効かないですよ・・・。
 それから、すごく汗かいてるから着替えさせないと・・・。
 このままじゃ熱を吸収しちゃって逆効果。」



「じゃあ、何か食べる物を貰って来るよ・・・。
 その間に着替えさせてやってくれないか・・・?」



「なるべく消化に良い物にしてね。」




ミリアリアの判断は的確で、アスランは彼女の言う通り、食べる物を取りに行った。




頼れる人が居て良かった・・・。


病気に関しては全くの無知・・・。


熱の対処くらいは出来る様になっておくべきだな・・・と痛感した。








俺が戻った頃には着替えも済んでいて、は気だるそうに体を起こしていた。



、大丈夫か?」


「うん。迷惑掛けてごめんね。」



「仕方ないさ。林檎貰って来た。食べれそう?」


「・・・うん。」





「じゃあ、私はもう行くわね。後は薬を飲ませて、温かくして寝てたら大丈夫よ。」



「あぁ、ありがとう。」








「何か・・・カーペンタリアの時と逆だね。」



「え・・・?」



「林檎、あの時は私が剥いてあげたなぁって思って・・・。」


「あぁ。、意外と不器用だな・・・って思ったな。」



「失礼ね・・・。」




少し楽になったは頬を膨らませた。


「ホラ、剥けたよ。」



「・・・私よりも上手い・・・。」



食べやすく一口サイズに切り分けられた林檎をは口に入れた。






「何か嬉しいな・・・。」



「何が?」



「こうやってアスランに看病してもらうなんて新鮮なカンジ。」



弱ってるも可愛いな・・・なんて思った。



は薬を飲み、再び横になった。




「これでしっかり寝たら熱も下がってるよ。」



「うん。ありがと・・・。お休み。」






まだ熱の残る額に再びタオルを乗せてやると、は落ち着いた様に瞼を閉じた。











普段よりも幼さを感じさせるの寝顔・・・・。


目覚めた時、側に居てやりたいから、俺はの手を握って彼女に寄り添う。






明日にはまた、元気な顔が見れる事を願いながら、
俺もゆっくりと瞼を落とした・・・。

















【あとがき】


アスランの看病ネタでした。
『戦場の歌姫』の番外編です。

読んで頂けたら分かると思いますが、
プラントを出て、アークエンジェルやクサナギと合流した当たりのお話の番外編として書きました。


必死にヒロインを看病するアスラン・・・という設定の筈なんですが、
あんまりうろたえてないというか・・・(汗)
ミリアリアに助けて貰ってるし・・・。



聖みゆき様、この度は初のキリリクありがとうございましたw
満足していただけたでしょうか??

またお時間あったら感想・苦情なんかを書き込んでいただけると幸いです。


ではでは((´∀`))



2005.2.23 梨惟菜







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