「アスラン、今大丈夫?」
「か?大丈夫だよ。」
一呼吸おいて、彼の部屋をノックしたら返って来た返事。
それに思わず笑みを零した私は廊下と彼の部屋を繋ぐ扉を開く。
「…どうしたんだ?」
低血圧のが朝早くからアスランの部屋を訪れるのは珍しい事。
時刻は朝の7時。
決して早い時間ではないけれど、が目覚めるのは朝の8時。
軍の朝礼が9時からだと言うのに、はいつもギリギリ。
アスランが8時に起こしに来て、文句を言いながらもダラダラと起きて…
とにかく朝のは不機嫌だ。
それが今日は珍しい事に、自分の部屋を訪ねて来てくれる。
「流石…アスランは早いのね。起こしてあげようと思ったのに…。」
いつも何時に起きてるの?
そう言いながらはちょこんとベッドに腰掛ける。
「何時って…5時…くらいかな?」
「早っ…」
どう頑張っても無理です。
「それで俺の部屋に来たのか?」
「う〜ん…それもあるんだけど…」
「??」
は何か言いたそうな表情で視線を送る。
その視線の意図が分からない俺はただ首を傾げるだけ。
「…いいや。帰る…。」
「は…?」
変化
「あれ?、髪切った?」
「ルナ〜〜〜〜!!」
が珍しく早いという事より先にそれに気付いたルナマリア。
嬉しいのか悲しいのか…
複雑な気分ではルナに抱き付いた。
「なになに…どうしたのよ…」
「アスランが気付いてくれなかったぁ…」
「え…?」
ちょっと気分転換に髪の毛を切ってみた。
の髪は艶々ストレートヘア。
切ったのは5cm程度だったと思う。
5cmだよ…5cm!!
毎日同じ軍服着てるんだから、それくらいの微妙な変化に気付いてくれても…
「アスラン…気付かなかったの?」
折角、朝早く起きて一番にアスランに言って欲しかったのにな…。
「それで早起きなんだぁ…。しかもアスランと別々で食堂に来るなんて…。」
「でも、別に喧嘩じゃないのよ?ただ、気付いてくれなかったからさ…」
「アスラン、鈍いもんね…」
苦労してるね…。
ルナマリアはそう言うけれど、顔は楽しそうだ。
「別にさ、可愛いね…とかって言葉を期待してた訳じゃないんだけど…」
「期待してたくせに…。」
「う…煩いなぁ///」
別に普通…だよな…?
いつもの時間に食堂へ誘いにの部屋に行ったら既に不在で…
仕方なく来てみると、ルナマリアと談笑しているの姿。
さっきは何となく様子が変だったし…。
朝早く起きてきた時点で何かが変だ。
何か…気に障る事でも言ったかな…?
そう思って、今朝の言動、行動を思い返してみるけれど…やっぱり浮かばない。
…と言うか、それ程会話もしない内に部屋に戻ってしまったし…。
「」
「あぁ、どうしたの?アスラン。」
こっちを向いたの表情も普段と変わりない。
「さっき部屋に迎えに行ったんだ。でも居なかったから…。」
「あぁ、たまには早く食堂に来てみるのもいいかなぁ…って。」
「だったら言ってくれたら良かったのに…。」
「…あ…ごめんね。すっかり忘れてた。」
「忘れてた…って…毎朝迎えに行ってるだろう?」
「だから…ごめんって言ってるじゃない…。」
思わずいつもより声を荒げてしまった俺に対し、のトーンもいつもより低く返って来た。
これは…
明らかに拗ねてる時の…?
「怒ってるなら理由を言ってくれよ。」
「別に怒ってないってば。」
「怒ってるだろう…どう見ても。何年付き合ってると思うんだ?」
「まだ付き合って1年経ってませんが?」
「そういう意味じゃなくて!」
「あ〜はいはい。2人ともそこまで。」
かなり子供染みたやり取りに困ったルナが仲裁に入る。
「あのね、朝からこんな人の多い所で揉めないでくれる?」
言われてここが食堂だという事を思い出した。
周囲のクルーは物珍しい…と言った表情で見詰める。
「後で…朝礼の後で話そう?」
「話す事なんて無いってば。ルナ、行こう。」
「!」
全く…何を怒ってるんだよ…。
結局、理由は分からないまま…
はルナマリアと食堂の隅のテーブルへと腰を降ろした。
「アスラン!」
朝礼が終わって、またしてもは避ける様に部屋へと戻ってしまう。
仕方なく部屋に戻ろうとした時、ルナマリアに呼び止められた。
「アスラン、ちょっと鈍すぎない?」
「え…?」
「が何で拗ねてるか分かってないんでしょう?」
「…知ってるのか…?」
「呆れた…。本当に気付いて無かったんだ…。」
「だから何が…」
「、髪切ったの。アスランに言って気付いて言って欲しかったのよ。」
「は?」
「どう見たって短いじゃない…。」
「それで…怒ってたのか…?」
「そうよ。愚痴を聞かされるこっちの身にもなってよね…。」
ブツブツと文句を言いながら、「早く謝っちゃって下さい!」と残し、ルナは去って行く。
本当…女の子って意味不明だな…。
腕組みしながら、の部屋の前へとやって来た。
「」
扉の前で声を掛けるけれど返事は無い。
「、居るんだろう?返事くらいしたらどうだ?」
「いませんよ〜だ。」
「…」
って…どうしてこうも子供っぽい拗ね方をするんだ…?
どう頑張っても開けてくれそうにないこの扉…。
仕方ない…強行突破…だな。
「は!?何で入って来れるの!?」
キーロックを掛けている部屋にも関わらず、アスランは難なく部屋に入って来た。
「何でって…ロック解除したから…。」
「だから何でナンバー知ってるの!?」
教えた記憶は無い。
確かに単純なナンバーではあるけれど…
「1029。俺の誕生日。が単純で助かったよ。」
失礼な!
…と言いたい所だったけれど、全くその通りで返す言葉も無い。
「で?何?」
「謝りに来た…って言ったら?」
「だから怒ってないのに…。」
「ゴメン…。」
「だから…っ…」
伸ばされたアスランの手によって、自由を奪われる。
気が付けばアスランの腕の中で…。
軍服からはアスランの匂いがした。
「ゴメン…髪…気付いてたんだけど…」
「へ?」
「何か言って欲しかったんだな…。気付かなくて…。」
髪を切っていた事にはすぐに気付いた。
でもその話題に触れて欲しかったとは思わなくて…。
「いつも何か言って欲しい時には自分で聞いてくるだろ?だから…」
「アスランってホント鈍感。」
「だから…っ…」
の顔を見ようとした瞬間…
唇に温もりを感じた。
見開いた瞳に映るのはの顔だけ。
キスをされているのだと気付いた瞬間…片手をの髪へと絡めた。
「ん…」
「そういう事はね、男の子から言って貰いたいの。」
「ゴメン…。」
「例えば、アスランより先にディアッカがそれに気付いて『似合ってるよ』って言ったらどう思う?」
「…面白くないな…」
「でしょ?」
そういう事か…。
「女の子はね、些細な変化でも一番に好きな人に気付いて言って貰いたいの。」
そう告げるの顔は何だか嬉しそうで…。
頬を膨らませているけれど、それがまた可愛いと…そう感じた。
「可愛いよ、。」
「なっ///」
「と2人きりの時には思った事、ちゃんと言う様にするよ。」
「アス…っ///」
言い切る前に、再び重なる唇…。
言って欲しいけど…
面と向かってそう言われてしまうと恥ずかしいんだと…
ようやく気付いたけれどもう遅い。
【あとがき】
擦れ違い⇒甘甘〜
そういう感じの夢になるように…と書きましたが…。
擦れ違いというか…喧嘩?
5cmっていったら結構長い…ですよね?
ちなみにヒロインはロングです。
なので自分で切りました。
…という事にしておきましょう。
ちなみに梨惟菜、自分で切って美容師さんを困らせた事が多々…。
花梨様、相互ありがとうございます♪
こんなのでよければ是非、お持ち帰り下さいませ♪
2005.7.16 梨惟菜