「じゃあ、今日の分もちゃんと復習しとく様に。」
「はぁい。アスラン先生。」
「・・・。その『先生』って呼び方、やめてくれない?」
「う〜ん。じゃあ・・・アスラン先輩。」
「・・・ま、それで勘弁してやるか。」
そう言って先輩は、私の頭をポンと叩いて帰って行った。
合格祈願
私は今、受験生ってヤツだ。
現在、合格率C判定のカレッジ目指して猛勉強中。
C判定って言っても、そんなに成績悪いわけじゃないのよ?
クラスでも中の上・・・ってトコロかな?
ただ、狙ってるカレッジがランクの高い所で・・・。
市内でもトップの難関校。
どうしても合格したい理由があるから、私は必死だった。
「アスラン先輩!!ネクタイ下さい!!」
「・・・は?」
今から一年前・・・。
季節は秋だった。
一学年上のアスラン先輩は超有名人だった。
成績優秀、スポーツ万能。
顔良し、性格良しのイイ男。
一目惚れだった・・・。
どうしても近付きたくて・・・
私の事を知って欲しくて・・・
でも、きっかけが掴めなくて・・・。
「あ・・・すいません!急に・・・。
あの、今すぐじゃなくてですね・・・
卒業式の日に・・・っていう意味なんです。」
私の慌てふためく様子に、彼はプッと吹き出した。
「随分と早い予約なんだな・・・。」
「す・・・すいません!きっと人気あると思ったから・・・。」
優秀な人のネクタイを貰ったら志望校に合格出来る。
それは表向きのジンクスで・・・。
女子の間ではもう一つの理由があった。
ネクタイを貰う=両想い の印。
だから、告白してOKの返事と共に貰う事に意味があるんだけど・・・
この際、そんな事はどうでも良かった。
アスラン先輩に私を知ってもらう為・・・
他の女の子にネクタイが渡るのを防ぐ為・・・
そして・・・
先輩と同じカレッジに合格する為・・・。
「君・・・名前は?」
「え・・・?あっ。です。・!!
一学年下ですっ!!」
「・・・ね。分かった。
予約、受付しとくよ・・・。」
その時の彼の笑顔があまりに眩しくて・・・
思わずその場に倒れそうになったのを覚えてる。
そして、卒業式の日・・・
先輩はネクタイと一緒に1つの約束をくれた。
「俺で良かったらいつでも勉強教えるよ。」
そう言って渡された、先輩のアドレスとナンバー。
ただの後輩から、教え子になった。
月に1回の家庭教師が週に1回になって・・・。
今では1日おきに勉強を教えに来てくれる。
成績も少しずつ上がって行って・・・。
先生にもこれなら大丈夫だろうって言ってもらえるようになった。
合格したら・・・先輩に告白する。
教え子から恋人になる事を願いながら・・・。
「ゴホッ・・・ゴホッ・・・!!」
試験当日・・・
私は自宅のベッドで寝ていた。
こんな大事な日に39度の高熱・・・。
信じられない。
自分で自分が情けなくて・・・
でも、熱と咳で苦しくて・・・。
試験、受けれなかった・・・。
悔しくて涙が出そうだった・・・。
コンコン・・・
「?入るぞ。」
・・・先輩!?
私は重たい体を必死に動かして頭から毛布を被った。
ドアがゆっくりと開いて、先輩の足音が少しずつ近くなる・・・。
「・・・起きてるんだろ?」
寝たフリすら通用しなかった。
毛布から熱を帯びた顔を出す。
「・・・すごい熱だな・・・大丈夫か?」
額に手を当てながら、先輩は私の顔を覗き込む。
「・・・ごめんなさい。」
「・・・え?」
「試験・・・受けれなかった・・・。」
そう告げる私に、先輩は笑顔で額の髪を掃う。
「まだ2次試験が残ってるだろ?」
「・・・でも・・・自信ないよ・・・。
私・・・きっと落ち・・・ひっく・・・。」
病気が私の心を弱気にさせる。
先輩の優しい言葉に、抑えていた涙が溢れてしまった。
「泣いたら余計苦しくなるだろ?
ホラ、とにかく落ち着いて・・・。」
先輩は私を抱き寄せながら背中を優しく擦ってくれる。
そのリズムに自らの呼吸を合わせていった・・・。
ずっと・・・このままでいられたらいいのに・・・。
「落ち着いた?」
「・・・はい。」
もう最悪だった・・・。
好きな人に抱き締められていたのに、
全身は汗でベトベト、
顔は真っ赤で、涙でグチャグチャだった・・・。
もう・・・恥ずかしさ全開・・・
「、君なら絶対に合格できるから。」
「でも・・・。」
「もっと自分を信じろよ。俺が保障する。
だから今は体を治す事だけ考えて。
治ったらまた俺が教えるから。」
先輩が指先で涙を拭ってくれる。
こんなに先輩が近くにいるのは初めてで・・・
熱があがってしまったんじゃないか・・・ってくらいに熱かった。
「それに、には合格してもらわないと俺が困るんだよ。」
「・・・え?」
「悪いけど、俺は好きでもない子にわざわざ勉強教えに来たりしないよ。
ちゃんと分かってる・・・?」
「えぇ・・・!?」
突然の告白に私の熱は更に上昇した。
そう言うアスラン先輩の顔は、私に負けないくらいに真っ赤だった。
「楽しみにしてるんだ。と同じカレッジに通うの・・・。」
「先輩・・・それ、すごいプレッシャー。」
私は額を彼の胸にくっつけた。
先輩の心臓の音が聴こえる・・・。
「・・・絶対に合格する。
そしたら、先輩の事、呼び捨てにしてもいい?」
「・・・楽しみに待ってるよ。」
絶対に合格するから・・・。
だから、春になったら、手を繋いでキャンパスを歩いてね・・・。
【あとがき】
アスラン先輩・・・
この響きに梨惟菜、萌えましたヽ(=´▽`=)ノ
いいじゃないですかぁ・・・♪
・・・って、勉強教えてる場面が無かった!!
ダメじゃん・・・(汗)
由奈様、いかがでしたでしょうか??
是非とも感想教えて下さい。
今後も宜しくお願いしますねぇ(○’▽’)ノ
2005.1.29 梨惟菜