Flower




























「イヤだ!!」





「どうして!?何でダメなの!?」






穏やかで平和なアスハ邸に同じ声が響く。





1つは怒りを含んだ声…



もう1つは何かを懇願する声…













「カガリ、いい加減に許してやったらどうだ?」






「お父様!」







父の言葉にはパアッと顔を綻ばせる。








「別に認めていない訳じゃ無くて…」





「そんなに妹が可愛いか?」





「当たり前です!」








言葉に詰まるカガリに父は嬉しそうに微笑んだ。






一見、姉妹での口論にも聞こえる会話の中には姉妹の愛も感じられ、純粋に嬉しいのだろう。













「いい青年じゃないか…。の婿にはピッタリだ。」






「話が早過ぎますっ!!」







…何で急にそんな話に…




気が付けば父と姉の口論…?





困り果てたはハァ…と溜息を1つ零した。




















ピルルルッ…





「あ…電話…」





ちょうどポケットの携帯が音を鳴らし、慌てて廊下へ出た。







『着信:アスラン』





見慣れた文字に自然と顔が緩む。












「もしもし♪」





『もしもし?今大丈夫?』






「うん、大丈夫。」






どんなに忙しくたって、アスランからの電話に出ない事は無い。





僅かな時間でも声が聞けるのは嬉しい事だから…。










『週末の事だけど…どうなった?』





「あ…それがね…カガリがダメって聞いてくれなくて…。」






『そうか…じゃあやっぱり他に行く?』






「でも…アスランには見て欲しいし…。」













アスランと付き合い始めて初めての春。





春と言えば『桜』。





…で、桜と言えば『お花見』。







桜が7分咲きになった今週、2人で初めてのお花見に行こうと決めた。




恐らくは今週末が一番の見頃。






どこの桜を見ようかと相談していて思い付いた場所が1つ。





アスハ家の敷地内にある小高い丘。





お父様も桜の花が大好きな方で、特別に木を植えたって…。





その桜の木々が私も大好きで…





だからアスランにも見せたいと思って、その場所を提案した。





敷地内だから貸切でお花見が楽しめると言う事もあって、アスランも快くOKしてくれて…。













ところが、何故かカガリが猛反対して話が一向に進まない。
























「お父様は是非って言ってくれたんだけど…。」




元々はアスランに恋をしていた筈のカガリが今ではアスランを敵視してる。






大事にされてるのかなぁ…なんて思いながらも内心は複雑。








『この間キラがいい花見スポットを紹介してくれたんだ。

 少し遠いけどもし無理ならそっちに行ってみようか…。』








「うん…私が提案したのにゴメンね…。」







『大丈夫だよ。と2人で一緒に居られるなら何処だって嬉しいんだ。』






「…ありがとう…。」






その言葉が凄く嬉しくて恥ずかしくて…





電話越しなのに頬がとても熱かった。




























「わ…凄い人…。」






予想通り、ほぼ満開となった桜。





名所と言われる場所は何処も人で一杯なのだろう。








「もう少し早く来た方が良かったかもな…。」






「うん…でも遠かったし仕方ないよ…。」






「そうだな。じゃあ場所を探そうか。」






「うん。」









握られた手を引くように一緒に歩き始めた。











「綺麗だね…。」





「あぁ…思ってた以上に凄いな。」









桜並木を歩きながら空を見上げる。







ピンク色の桜の先に見える青…





所々に広がる白い雲…







淡い色遣いに春を感じる。




















ようやく人の少ない場所を見つけてシートを広げた。






その上に持っていたバスケットを置く。






、ずっと聞こうと思ってたんだけど…その中身って…」







「あ…お弁当…作ったの。 やっぱりお花見にはお弁当かな…って。」









はちょっと恥ずかしそうにバスケットの蓋を開いた。









「…ちょっと多かったかも…。」






「こんなに作るの、大変じゃなかったか?」





「…ううん。そんな事ないよ? お弁当って簡単だから…。」









でも…きっと早起きしたに違いない。










「味にはあんまり自信無いんだけど…その…」






「うん?」







「えっと…あ…愛情は…こもってる…から…。」







言った直後には真っ赤になって俯く。





語尾の方は小さくて聞き取りにくかったけど、確かに聞こえた。









「あぁ…。嬉しいよ。ありがとう。」





まだ赤い頬にそっと口付けた。






















「綺麗だね…。」





「あぁ…。」






バスケット一杯に入っていたお弁当は1時間後にはカラッポになった。





並んで座って…手を繋いだまま桜を見つめる。






風でハラハラと舞い散る桜がとても綺麗で神秘的で…







この場所だけ時間の流れが違うみたい…






このまま時間が止まってしまえばいいのに…










そう思っていたら、何だか瞼が重たくなった…。












…眠いのか…?」






「ぅん…? 大丈…夫」





瞼を擦りながら、は何度も瞬きをした。





その仕草がまた可愛くて…









「え…?」





握っていたアスランの手が離れ、そのまま後頭部に回された。






そしてアスランの肩に乗せられる形になった。









「眠っていいよ。 疲れてるだろ?」





「でも…」





「朝早かったからな。仕方ないよ。」








「…折角アスランと一緒にお花見してるのに…。」






「じゃあ、こうしようか?」





「え…っ…」




















急に視界が青になる。





空が眩しいほどに輝いていて…




私の頭の下にはアスランの腕…






つまり…腕枕ってヤツで…









「いい天気だし、一緒に昼寝、しよう?」






「…う…うん…。」







隣にアスランが居るだけでドキドキしてるのに、腕枕されて一緒にお昼寝だなんて…






一瞬、覚醒した瞼は再び重たくなって…








すぅ…っと寝息を立てて夢の中へと誘われて行った。










「お休み、。」





桜色の唇に自分の物をそっと重ねたアスランもまた、同じ様に瞳を閉ざした。



























【あとがき】

ユーリ様、お待たせ致しました。

アスランとのお花見デートでございます。

一応『スポット』の続編のつもりではありますが…

あまりカガリが目立っていませんね…すみません。

何かハプニングを含めようかな…とも思ったのですが…

今回は久し振りにほのぼの全開で仕上げてみました。

いかがでしょう?

そして個人的に一度はやってもらいたかった…

アスランの腕枕でお昼寝…♪

本当に個人的な趣味で申し訳無いです(汗)






2006.3.13 梨惟菜











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