気が付けばいつも視線の先にいる君。



整った顔立ちにキリッとした瞳…。



誰もが君に惹かれているのに、その視線も全く気にしない君。



周りに流されない、芯の通った君。



そんな君を愛しいと思うようになるのに、時間はかからなかった。










cool beauty












、MSのチェック終わった!?」




「あぁ、ちょうど今終わった所。シンも?」



と呼ばれた少女はシンに微笑を向ける。



その微笑に周りに居たクルーは釘付けになる。








それもその筈…



このミネルバに乗艦しているパイロットのは類稀なる美女。


元々、容姿端麗なのがコーディネイターの特徴でもあるのだが、彼女はまた秀でて美人だった。





成績は優秀、常に冷静沈着で滅多な事では動じない。




そんな彼女が一番親しいのがシン・アスカ。


2歳年下のミネルバ期待の新人。


精神的にはまだまだ幼さを残す彼だが、軍人としての能力は十分。








「ザラ隊長?」



「えっ…」


「どうかしたんですか?」



色々と思考を巡らすアスランをが覗き込む。


あまりの至近距離にアスランは思わず目を見開いた。





い…いつの間に…



「何か考え事ですか?ザラ隊長ともあろうお方が、油断しましたね。」



はクスリと微笑すると踵を返した。



「これからシン達と食事なんですけど…一緒にどうです?」


「いや…俺はまだMSのチェックが残ってるから…。」



「そうですか。何かお手伝いしましょうか?」


「いや…一人で大丈夫だ。」


「分かりました。では、お先に失礼します。」













はぁ…


彼女と居ると息が詰まる。


誰もが溜息をつく美少女。



そんな彼女に見つめられて動じない男がこの世に居るのだろうか…。




勿論、俺だって例外じゃない。



このミネルバに乗艦して数週間…。


多くは語らない彼女を見る度に、彼女の事を知りたいという好奇心が広がって行く。



この気持ちが何なのか…気付いていない俺じゃない。






そう…


彼女を1人の女性として愛しているんだ…。





















仕事を終えて食堂に入ると、とシンが楽しそうに談笑している様子が視界に入った。





「これじゃ、当分はプラントに戻れないんだろうな…。」


不満そうに愚痴を零すシン。


2人に背を向ける形で座ったアスランは、2人の会話に思わず耳を傾ける。





「そうね。すぐに戻れると思ってたんだけど…まさか降下しちゃうとは思わなかったからね。」



「あ〜あ。のお母さんの手料理、恋しくなってきた…。」



「そうね。母さんも父さんも…シンに会いたがってると思うなぁ。」






…え…?


意味深な2人の会話に、アスランの食事の手が止まる。




今の会話の内容からして…


シンはの実家にしょっちゅう出入りしている…という事か?



しかも…親公認の仲!?










「ヤベ…もうこんな時間!?」



時計に目を向けたシンが慌てて立ち上がる。




「何?何かあるの?」


「俺、MSのチェックまだ終わってないんだ!」



「何やってるのよ…。」


「ヨウランに後回しにされちゃってさ!じゃ、お先!!」





バタバタと食堂を後にするシン。


それを見送ったは、トレイを片付けに立ち上がると、代わりにコーヒーを入れて戻って来る。






「隣、いいですか?」


アスランの横で立ち止まったの手には2人分のコーヒーカップ。




「え?あぁ。」



「じゃ、失礼します。宜しかったらどうぞ。」



そう言って差し出されたコーヒーから湯気が立つ。



「あぁ…済まない。」

















「ザラ隊長、1人がお好きなんですか?」




「その呼び方はやめてくれ…。同い年なんだし…。」



「えぇと…じゃあ…」


「アスランでいい。それと敬語も…。」



「じゃあ…アスランは1人で居る事が多いのはどうして?」





返事に困っていたにそう付け加えると、は即座に名前を呼んで問い返す。








「別に1人だから…とか気にした事は無かったが…目立っているか?」




「いえ…そういう訳じゃないんだけど。ただ、私も1人の方が落ち着くから…。」






言われてみれば…


確かに彼女が誰かと一緒に居る姿はあまり見ない気がする。



居るとしたらシンと…。



それを知っていて、クルーのメンバーは寄り付かないのか…。


それとも、彼女のクールな雰囲気がそうさせているのか…。








「でも…随分とシンとは仲が良いみたいじゃないか。」



「そう…?」



「ひょっとして…付き合ってる…とか?」








否定してくれる事を心の中で願いながら、アスランはさり気なく問い掛ける。



「…は…?」




そんな問い掛けに対し、は驚いた表情でアスランを見返した。




「やだ…そんな筈ないじゃない。あの子、まだ16よ?」



年下なんて対象外。



そんな風に答えるに、アスランの疑問は増す。




「でもさっき…家族の話してただろ?よく家に行ってるんじゃないのか?」


「あぁ。だってホラ…。シンとヨウラン、親友みたいなものだから。」



「は?」


何故そこで整備士のヨウランの名前が出てくるのか…。


さらに疑問が深まる。




「もしかして…知らなかった?」



「え?」


「私のフルネーム、知ってる?」



・ケント…だろ?」


知らない筈が無い。

仮にも好きな人の名前なんだから。




「じゃあ、ヨウランのファミリーネームは?」


「いや…それは…」



よくよく考えてみたら、他のクルーのファミリーネームまで覚えている余裕は無く…

だから、彼のファミリーネームまで知っている筈も無かった。





「ヨウラン・ケント。私の弟。」


「えぇ!?」




「だからシンもよく家に遊びに来てるの。」


「姉弟!?嘘だろ!?」


全然似てない上に、肌の色が違うじゃないか!!





「似てないって良く言われるのよね…。」






















「私、年下と付き合うなんて無理だと思うの。」


「どうしてそう思うんだ?」



「だって…しっかりとした相手の方が楽だし、落ち着くじゃない?」


「例えば?」


「そうね。アスラン…とか。」



「ぶっ…!!」




予想もしない答えにアスランは思わずむせる。



冗談にしてはキツすぎる…。




「…もしかして…冗談だと思ってない?」


「え…?」


「私、本気で言ってるんだけど…。」






いつもクールで、感情をあまり表に出さない



こんな状況下でもやはりそれは変わらなくて…




「そんな事、平然と言われても…」



「ただ顔に出てないだけで、内心凄く緊張してるんだけど…。」



「本当か?」


「本当よ。ホラ。」




そう言うと、はアスランの手首を掴み、アスランの指先を自分の手首に当てた。



そっと脈を取ると、確かに脈は速く波打っている。



「ね?」





そんな彼女が微かに微笑んで見せるから…


アスランは思わずをその場で抱き寄せた。







幸い時間帯がずれている為、食堂には誰も居なかった。


「アス…ラン…?」


「本気にしていいのなら…俺も同じ気持ちだって…そう言いたいんだけど?」


「…もう言ってるじゃない?」



耳元でがクスクスと笑いながら答える。


自分の腕の中に、が居る事が信じられなくて…。



アスランの体は次第に熱を帯びて行く。




「アスラン…こんな所で抱き締められてたら恥ずかしいんだけど…。」



いつ誰が来てもおかしくない場所…。


さすがにこんな光景を誰かに見られたら、いつもクールなだって恥ずかしいに決まっている。




「じゃあ、俺の部屋に行く?」



今度はアスランが甘い声で囁く。



「残念。もう戻らないといけない時間だわ。」


ゆっくりとアスランの胸を押して体を引き離す


アスランは名残惜しそうにを解放する。






「仕事終わったらアスランの部屋、行くね。」


「待ってる。」



辺りに誰も居ない事を確認した2人は、そっと唇を重ねた。









「ね…さっきシンに嫉妬してたでしょう?」



「…さぁ?」



視線を合わせずそう答えるアスランの頬に、はそっとキスを落とした。



「好きよ。アスラン。」



















【あとがき】


…甘かったでしょうか…

クールなヒロイン=アスランに甘える事が出来ない

そんな方程式が成り立ってしまいまして…(汗)

今の段階ではヒロインが優位なカンジがします。

あとはアスランの頑張り次第…という事で。


リク下さった樹様、いかがでしたでしょうか?

こんな駄文で申し訳ありませんです。

また遊びにいらしてくれたら嬉しい限りです。





2005.4.26 梨惟菜





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