初めて逢った君は今にも泣き出しそうで・・・


散りゆく桜の花びらの様に儚げだった。




逢った瞬間に魅かれてた・・・。




君の事なんて何一つ知らない筈なのに



僕の心が君を求めてた。








桜の季節に









ドンッ!!





アスランに貰ったトリィを探してる僕は、全く周囲が見えていなかった。


前方から歩いて来た人に気付かず、正面からぶつかってしまった。





「きゃっ!!」





バランスを崩してその場に倒れそうになった相手を、
しっかりと支えて引き寄せる。


僕の鼻を甘い香りが掠めた・・・。






「・・・ごめんなさい。ボーッとしてて・・・」



「あ・・・僕の方こそ。ちゃんと見てなかったから・・・。」



よく見ると、相手は僕と変わらないくらいの年の女の子。

小柄で薄紅色の髪を一つに結んだ可愛らしい女の子だった。



そんな彼女の俯く顔に、僕はドキッとした。


頬を紅潮させていた彼女は、よく見ると頬だけでなく瞼まで赤く染まっていた。


まるで・・・さっきまで泣いていた様な瞳・・・。








「あの・・・大丈夫?」



「あ・・・はい。怪我もしてませんから。」


「そうじゃなくて・・・目、腫れてるから。」



僕の言葉に、彼女は一層赤くなった。





「ついさっき・・・彼と別れたばっかりで・・・。」



泣いていた理由を聞かされた僕の心臓がドクンと波打った。




「やだ・・・私ってば初対面の人に・・・。ごめんなさい。」



そう言って彼女は、するりと僕の腕から抜け出した。





「・・・痛っ!!」



気が付けば彼女の長い髪の毛が、僕の袖の金具に絡まっていた。


「・・・とりあえず、そこのベンチにでも座って外さない?」












「どうして別れちゃったの?」


沈黙が続くのも気まずくて・・・

かと言って、ついさっき出逢ったばかりの相手に話も浮かばない。



気付けば、名前も知らない女の子にそんな事を聞いていた。




「彼ね、プラントの人なの。遠距離で2年。
 なかなか会えなくて、少しずつ気持ちが冷めちゃって・・・。
 今日、半年振りに会って、別れ話をしてお終い。」


彼女は明るく言ったけれど、背中は寂しそうだった。




「まだ、好きなんでしょ?」


「・・・ううん。もう駄目だって分かってたから未練とかはないの。
 でも、1人になっちゃったらね、付き合い始めた頃の事とか思い出しちゃって。
 なんか悲しくなっちゃった・・・。」




「そうなんだ・・・。」





女の子の髪の毛に触れるなんて初めてだったから、
指先が震えて上手くほどけない・・・。


手先から漂う甘い香りにドキドキする・・・。








「はい、外れたよ。」

「どうもありがとう。」


彼女は振り向いて僕に笑顔を見せてくれた。


「そう言えば、名前も聞いてなかったね。
 私は。あなたは?」


「・・・僕はキラ。」




僕達は顔を見合わせて笑った。


腫れが引いた彼女の瞳はとてもキレイで・・・

思わず顔が緩んでしまった。




、また会えないかな?」


僕は勇気を出してにそう言った。



「私も同じ事考えてたの。
 明日もこの時間、ここで待ってる。」










と話をするのは楽しかった。


は僕の話を一生懸命聞いてくれたし、
いつも笑顔を絶やさない、優しい子だった。



毎日、同じ時間に同じ場所で・・・。


桜の花が大好きだと言う彼女は、
いつも桜の木の下にあるベンチで僕を待ってくれていた。









花の命は短い・・・。


勿論、桜だって例外では無かった。





その日は風の強い日で・・・


いつもの様にの待つベンチへ向かうと、
ベンチに座る彼女の姿に目を奪われた。




風で舞い散る桜の花びら。


花吹雪の先に見える彼女は、今にも消えてしまいそうだった。


まるで・・・花びらのように。



!!」



思わず叫んでしまった僕に気付いたは、
笑顔で手を振り、駆け寄って来てくれた。



そんな彼女を、力一杯抱き締めた。




「・・・キラ?どうしたの?」



・・・消えちゃいそうだった。」



そんな僕の言葉に、は腕の中でクスクスと笑った。




「そんな筈無いじゃない。
 キラって案外、寂しがり屋なのね。」




桜を見ると思い出す。


あの日も・・・こんな風の強い日だった。



『また会えるよ・・・。』


そう言ってアスランと別れてもう3年になる・・・。







「私はどこにも行かない。ここに居るよ。」


は僕の背中に腕を回し、そっと抱き締めてくれた。



「好きよ・・・。キラの事が。」


思い掛けない一言に、を抱き締める力が緩んだ。




「気が付いたら好きになってたの。
 私を寂しさから救ってくれたのは・・・キラだから。」



の言葉がゆっくりと心に沁み込んでゆく・・・。


温かくて優しい気持ちが胸に広がってゆく・・・。







「キラの事、好きでいてもいいかな・・・?」


「うん。嬉しいよ。」




「ずっと側に居るから。」


は再び、僕を抱き締める。


彼女なりの精一杯の力で。



「初めて逢った時から、ずっと僕はの虜だよ。」






この桜の花が散ってしまっても、この想いは消えない。


来年も、再来年も桜の花が咲くように


いつまでも一緒にこの桜を見に来よう・・・。















【あとがき】


初のキラ夢リクを頂いてしまいました♪
完全にキラ視点の夢になってしまいました。

お相手の視点のみで書いたのは初めてでした〜。


何か、キラって受け身なイメージがあります。


完全にヒロインが主導権握ってましたよね…(汗)



花明沙羅様、いつもリクありがとうございます♪
キラ夢にも挑戦してみたかったのですが、
どんなシチュエーションにしたらいいのか悩んでしまう所だったので、
ようやくキラに挑戦する事が出来ました(^−^)
こんなカンジで良かったでしょうか?


また感想聞かせてくださいね♪





2005.2.10 梨惟菜





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