「またここに居た・・・。」



広い墓地が夕焼け色に染まりゆく。


教会から鳴り響く鐘・・・。


毎日欠かさずに通う、大切な場所。




今日もあなたの居ない一日が終わろうとしてる・・・。


また・・・あなたと過ごした日々が思い出に変わってゆく・・・。








Four Hearts


  〜秋空の下で〜







停戦から2ヶ月・・・


プラントもすっかり冷え込む季節になり始めた。



議会も軍も・・・未だ戦後処理で慌しくて・・・。



それでも毎日、欠かさず来る場所がある。



どんなに忙しくても・・・必ずあなたに会いに来る。






『ニコル・アマルフィ』




そう刻まれた墓標に目を細める。







同僚から婚約者候補になって・・・

ようやく恋人同士になって・・・。



それからわずか半年・・・。


半年で私達の恋は終わってしまった。










「いつまでそうしてるつもりだ?
 達と食事の約束してるんだろ?」



「・・・あ・・・そうだった。行かなくちゃ。」



「ついでだから送ってやるよ。
 ・・・ってか、に頼まれたし。」



「・・・ありがと。」












、お前、無理してない?」


「・・・何が?」




ディアッカの運転で目的地へと向かう途中、
ディアッカが気になっていた事を問い掛けた。



「ニコルの事に決まってるだろ?
 あいつ死んでからもバタバタしてたしさ・・・。」



誰かを気遣うのは苦手な事だったが・・・


はニコルを・・・

恋人を失った辛さを表に出さない。


だから、逆に痛々しく感じるのだった・・・。





「軍人だもの。覚悟は出来てたわ。
 私だっていつ死ぬか分からない身だったし・・・。」



そうキッパリと言われてしまったら、何も返す言葉が無い。






「ディアッカ・・変わったね。」


「そうか?」



「前は気配りなんて出来ないヤツだったじゃない?」



「・・・失礼なヤツだな・・・。」





干渉せず・・・

干渉されず・・・



お互いに恋人が出来る前の私達。


一緒に居て気が楽だった私達・・・。



でも、一番近い様で遠かった。


お互い、本音を曝け出せる相手に出会って・・・。


それでもどこか、私とディアッカは似ていた。












「ありがとね。」


わざわざ運転席から降りてドアを開けてくれるなんて・・・


以前のディアッカなら考えられただろうか・・・




「じゃぁ・・・また明日、評議会でね。」


ディアッカに背を向けて、レストランの門をくぐろうとした時・・・



!!」



ディアッカが私を呼び止めた。




「ん?何?」



「泣きたい時には泣いた方がいいぜ?
 じゃないと、これから先も泣けなくなる。」



その言葉を残し、ディアッカは車内へと戻って行った。









心臓がざわめく・・・


ディアッカの言葉が頭の中をグルグルと駆け巡る。




私だって・・・


好きで笑ってるんじゃないよ・・・


泣けないんだよ・・・






だって・・・


ここで泣いてしまったら・・・


ニコルがもう戻って来ないって認めてしまうようなものじゃない・・・






分かってる・・・


分かってるの・・・。





いくら待ったって・・・


ニコルはもう・・・戻って来ない・・・。












ディアッカから電話を貰ったは、を迎えにレストランの外に出た。




!遅かったじゃ・・・」



いつもと違うの様子に気付き、は肩に触れようとした手を引いた。




「・・・・・・?」








「・・・っく・・・」



は泣いていた・・・。


普段のからは想像もつかない泣き方に、は言葉を失った。



両手で顔を覆いながら、必死に溢れる涙を抑えようとする。





・・・大丈夫・・・?」



ディアッカから話を聞いていたはそっとを抱き締める。



はしゃがみこんだまま・・・


の腕の中で震えていた・・・。




大人で・・・4人の中で一番しっかりとしたのこんなに取り乱した姿を誰が予想出来ただろうか・・・。




「抱え込まないで話して・・・。
 だって・・・の時にそう思ったでしょう?」










愛する人を失って初めて・・・


あの時のの気持ちが理解った。



ニコルを失うという事は・・・


私の心を失うという事・・・。










戦争が終わったら・・・



私だけの為にピアノを弾いてくれるって・・・


私の為に、曲を作ってくれるって・・・




交わした約束の全てが、約束のまま終わってしまった。



まだ何も始まっていなかったのに・・・


どうして奪ってしまったの?




私にはニコルしかいないのに・・・


初めて・・・本当の自分を見せる事が出来た人だったのに・・・。





ニコルさえ居れば・・・それで良かったのに・・・。













「ごめん。情けない所見られちゃったね。」



そう言って、はにかむは・・・

いつもと同じキレイな笑顔を見せた。




「たまには泣かなくちゃ。
 じゃないと泣けなくなっちゃうよ?」



ディアッカと同じセリフに、は思わず笑ってしまった。




「えっ?何??」

珍しく声を出して笑うに、は驚く。



「さっきね、同じ事、ディアッカに言われた。
 珍しくいい事言うじゃんって思ったのに・・・。
 の受け売りだったのね。」




でも・・・ディアッカのその言葉に救われたのも真実。




「遅くなっちゃったね。中、入ろうか。」


「うん。、待ってるよ。」








ニコル・・・


私、恵まれてるね。



優しい仲間に囲まれて・・・


優しいあなたに出会って恋をして・・・。





だから、今日まで頑張って来れた。



私、今でもあなたを愛してる。


だって・・・私の恋は始まったばかりだから・・・。



終わらせるには、まだ早過ぎるから・・・。



だから、これからも毎日、あなたに会いに行く。


あなたに一番似合う、白百合の花を持って・・・。










【あとがき】



初の悲恋夢にチャレンジでしたぁ〜。
難しいなぁ・・・悲恋。


・・・って言うか・・・
下手するとディアッカ夢では・・・。


『Four Hearts』本編では、
一応、ニコヒロとディアヒロが軽く絡んでたりしたので・・・
今回はディアッカとディアッカのヒロインに頑張ってもらって・・・。


上手く書けてたかなぁ・・・?


花明 沙羅様♪
いつもリクありがとうです〜。

こんなカンジで満足いただけたか不安ですが・・・。


また宜しくお願いしますね♪




2005.2.17 梨惟菜



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