「う〜…重いぃ…」






長い廊下を歩くは両手に沢山の書類を抱えて唸っていた。






ようやく自分の仕事を片付け、部屋へ戻ってシャワーを浴びようとしていたのに、何故か艦長に呼び止められ…





気が付けば、帰りがてら書類の配布を頼まれてしまうのだった。











「残り全部…アスランの…?」







部屋へ戻る道順に書類を配っている筈なのに何故か大量に残って…




良く見ると、残りは全部アスランの物だった。








こんなに膨大な書類にいつも目を通してるんだ…









改めて彼の地位の大きさを実感させられた。




























  甘いひととき





















「どうしたんだ!?コレ…」






ようやく辿り着いたアスランの部屋のインターホンを鳴らす。





扉を開いたアスランの目の前に飛び込んできたのは書類の山。






書類で隠れて見えない顔…




上半分を持ち上げてやると、の顔がひょこっ…と姿を現した。








「コレ、艦長に頼まれて持って来たの。」




「あぁ…今日の分か。済まない。」





「どういたしまして。」


















「折角だから寄って行く?お茶くらいならご馳走するよ。」




「本当?じゃあ、お言葉に甘えて…」










お邪魔しま〜す…と愛らしく付け足したは遠慮なく部屋の中へと入った。














「…飲んでたの…?」






パソコンの横に置かれていたワイングラス…



中には赤ワインが半分ほど残っていた。








「あぁ…明日は非番だから少しだけ…ね。」







アスランがお酒を飲んでるなんて珍しい…。




…って言うか、初めて見た?







アスランって真面目だし…







「…飲む…?」




キラキラと目を輝かせてグラスを見詰めるに気付いたアスランがとりあえず聞いてみる。






「…いいの?」




「いいけど…ってアルコール、飲むのか?」





「強いのは飲まないけど…赤は好きなの♪」




「そっか。じゃあグラス取って来るから適当に座ってて。」





「ありがとう。」









重い荷物を運んで来て正解だったなぁ…と微笑むは、フワリとベッドに腰を下ろした。










アスランの部屋…初めて入っちゃった…。






流石…と言うべきか…




至ってシンプル…そして綺麗に掃除されてる。





几帳面…なんだよね、この人。





何においても丁寧で…


言い方を変えると細かい?





そういう所、嫌いじゃない。




むしろ…好き?





周りを気にして気配りをする事に一生懸命で…


なのに、意外と鈍感。




そんなギャップが私のツボだったり…。















「はい。どうぞ。」




注がれた赤ワインを受け取ると、グラスから甘い香りが漂った。




「うわぁ〜いい香り…いただきます。」




一口…コクリ…と喉に通した。





「…っ…コレ!!」




「何?」




「高級品じゃない!」





味が違うっ!



私が普段飲むような安物の味じゃ無いんですけど!






「いや…たまたま安く手に入っただけだから…」




…流石はお坊ちゃまだ…




「特に銘柄とか気にしないし…遠慮なく飲んでくれていいよ。」




「…本当に…?」




「あぁ…」





こんな高級品…滅多に飲める物じゃない。






















…」



「んん?」



「ちょっと…飲みすぎじゃないのか…?」




「へ〜きらよ…これくあい…」




舌…回ってないんだけど…




気が付けばボトルの半分以上が無くなっていた。




勿論、ワイン大好きと豪語するばかりがグラスを空にしていて…




一杯だけ飲んでぐっすり眠ろうと思っていたが、がこの様子じゃ…








「もう止めておくんだ。」




「だぁいじょうぶらって!あしたおやすみらしぃ…」




「駄目だ。ホラ、部屋まで送るから…」




「やぁだぁ…」




腕を引くと駄々をこねてシーツにしがみ付く。




…いい加減に…」



強く引っ張ったその時だった。




「あしゅらんは…あたしのこときらい?」



「は?」



急に涙目になるが、上目遣いで顔を見つめて来た。





「ねぇ…きらい?」



「や…俺は…」



むしろ、その逆…




下心がある訳では無いが、重い書類を持って来てくれたお礼を口実に少しでも一緒に居たくて招き入れた。



結果、こんな事態に陥るとは思わなかったけれど。







「あたしはねぇ…あしゅらんがいちばんすき。」



「え?」




「だぁ〜いしゅきなのぉ…」




頬を真っ赤に染めて…ニコニコして…




…酔ってるんだろ?」



「酔ってなぁい…」




今度は猫の様に擦り寄ってくる。




!ちょっ…!」



可愛過ぎる!






「あしゅらんがだいすきなのぉ…」



何度も何度も呟く様に…



酔った勢いで出た本音に動じない筈も無く…





…」



もう一度名を呼んだ時には既に、は夢の中へと旅立っていた。






「あしゅらん…すき…」



寝言でも同じ言葉を続けながら、スヤスヤと寝息を立て始めた。
























「ん…」




何コレ…



頭がガンガンする…





「今何時…?」




起きるといつも髪の毛がぐちゃぐちゃになっているから、起き上がるときに髪を手で梳くのが癖になっていた。




いつも通りの仕草で起き上がる。






あれ…?



シャワー浴びたっけ…?



何故か曖昧な昨夜の記憶…。



アスランの部屋に行って…ワインを少し貰って…




…少し…?















「ん……?」




「!?」








ココ…



アスランの部屋!?









同じベッドに眠るアスランに目を見開いた。




乱れた濃紺の髪…



上着を纏っていない、水色のインナーのシャツがやけにリアル…












「おはよう、。」




「え…と…おは…よう…」





慌てて服を確かめると、昨日の格好のまま…





「あぁ…皺になっちゃったな。脱がしてやりたかったんだけど、流石にそれはまずいと思って…。」




そりゃ…仰る通りで!



ってか…記憶無くすまで飲んでたのか…私っ…













「あの…私…何か困らせたりしてない?」




こんな事態に陥るなんて思ってもなかったから…



お酒に弱いとは思っていないけれど、記憶が無い以上は何をしたかなんて分からなくて…








「凄かったな…昨夜のは。」



「凄い!?何が!?」




一体何をやらかしたんだ!?



一瞬、邪な想像が脳裏を掠めたけれど、服は乱れて無いし…



何より、アスランが脱がせるわけにはいかなかったと証言しているし…




じゃあ…何が…?









「ずっと『アスラン好き好き』って…」



「…っ!?」



「何言っても反応してくれないし…そればっかり呟いてて…」




「そ…それはっ…!」




酔ってつい本音が…っ…



…って言うべきなのか…誤魔化すべきなのか…


















「俺もだよ。」



「へ?…ぅわっ…!」




再び…ベッドの中へと引っ張られる…






「自分の気持ちを言うばっかりで聞いてくれないから困ったよ。」



「や…あの…?」




「俺も、が一番好きだ。」



「!?」









そう言って、唇を塞がれる。





「まだワインの味が残ってるな…」



「…っ///」



ペロリ…と唇を舐められ、再び頬が真っ赤に染まった。






「今日は非番なんだろう?ここでゆっくり過ごそうか。」




「え!?何で知って…」




「それも自分が言ってたんだけど?」








酔って記憶の無いまま色々と口走って…



形勢は完全にアスランに有利なこの状況…









非番のを誘おうと同じく非番のクルー達が一日中を探して艦内を駆け回っていた事をは知らない。





2人は甘いひとときを過ごしていたから…。
























【あとがき】

酔っ払ってアスランに迫っちゃいました〜。

ワインの銘柄とか…色々調べてたんだけど途中で断念。

アスランはワインなイメージなのでこんな感じで。

キラなんかは意外と日本酒が似合いそうですねぇ〜。

ムウはブランデー♪

話が逸れました。悪い癖です。


こんな感じで甘く…なったかどうかはたまた微妙ですが。

お酒ネタ。

凌様、いかがでしたでしょう?

ご希望に添えられていますでしょうか?

また遊びにいらして下さいね?







2005.8.30 梨惟菜









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