「シ〜ン〜ちゃんっ♪」








「わっ!!」







急に背後から聞こえる自分を呼ぶ声。





驚いて声が裏返るのも当然だ。






名前を呼ばれただけじゃない。






首筋に絡まる、白くて細い腕。






リアルな感触。






俺の心拍数は軽くいつもの倍。


















さん!」






「何?」






「いい加減、俺の事からかうの止めて下さいよ…。」
























愛情表現





















「あら、からかってるつもりは無いんだけど…。」






「そうなんですか?」






「スキンシップよ、スキンシップ。」







「はぁ…」







1歳年上の先輩。





あの伝説のエース、アスラン・ザラの元同僚。






美人で気さくでしっかりしてて…


理想の先輩像





なんだけど…








どうしても理解出来ない謎めいた部分が1つ。












年下男が好みらしい




















「って言うか…シンの何処がいいんですか?」






「…全部?」






1つ年下…先輩から見れば2つ下のシン・アスカに惚れてるらしい。






シンはからかわれてるだけだと思ってるみたいだけど。








って言うか、さんには勿体無い。








容姿だって経歴だって申し分無いトップクラスのエリートなのに、何でシン!?





あのさんが年下?





あまりにイメージとかけ離れてて…






せめてレイだったら釣り合いが取れるって言うか…





だってシンはあまりにも子供っぽいんだもの。




























さんって男の趣味悪いんですね。」





「え?」






「私にはどうしてもシンの魅力が理解出来ないんですよね〜。

 そりゃ、確かに見た目は合格だと思うんですけど…」







「ルナマリアの好みじゃない?」





「…はい…」







「ま、人の好みはそれぞれだしね。」








そう言って微笑んださんの顔は本当に綺麗で…





あぁ…恋してるんだな…って思った。



































「シン…もうすぐ誕生日でしょ?」






「え…? あぁ…はい…」







久し振りに2人きり…だ。






珍しく静かなラウンジ。





背中越しに聞こえるさんの声…。







話題は…俺の誕生日の話。







9月1日…俺の18歳の誕生日。






そう言えば、18歳って結婚出来る歳なんだよな。






少しだけ視線を真後ろの彼女に向ける。






サラッと伸びた髪…







今日は下ろしてるんだ…








「プレゼント、何が欲しい?」





「え?」





「誕生日のプレゼントよ。」





「あ…えっと…」







さんが…俺にプレゼント?






「急に言われても難しいか。」





「…えっと…」






「ま、考えといてね。」






「あ…はい…っ」





















美人…だよな、やっぱ…。





さんを見る度に思う。






メイリンやルナに比べるとずっと大人っぽくて…





そんなさんは何かと俺を構ってくれる。





凄く嬉しいんだけど…時々切なくなるんだ。







こんな風に恋をしているのは俺だけなんだな…って。




































「…さんに告白したい?」







相談を受けた2人は目を丸くした。





友達付き合いを始めて4年。




恋の相談を受けたのはこれが初めてだ。











「って言うか…今更告白?」



「うん、今更だよね?」




「え…?」








ヨウランとヴィーノの呆れたような顔に戸惑う。





今更って何だよ…





人が真剣に相談してるのにさ。












「シンってさんが初恋?」





「なっ…何でそんな事…今は関係無いだろ!?」





「いや、関係あるだろ。」






「…そう…だけど…?」





渋々質問に答えた。





「やっぱりな…」




「だから何が!」






言葉の意図が全然分かんないのは俺だけ!?




頼むから主語を付けて話してくれよ…








「まだまだお前も鈍感だな…って事。」




「だね。」





「はぁ?」





「って言うか、普通に言えばいいじゃん。

 『好きです』ってさぁ…。」




「だからそれが出来たら苦労しないんだってば。」






「ま、頑張れ。」






「ってそれだけかよ!!」






相談の甲斐もなく、2人は明確なアドバイスもくれないまま出て行ってしまった。
































「プレゼント?」





さんが俺にくれるって。 何がいいと思う?」







「何がって…自分で考えなさいよ。

 自分の誕生日プレゼントなんでしょ?」





「そりゃ…そうなんだけどさぁ…」








ヨウランもヴィーノもルナも…




さんの話題になると反応が冷たいんだよな…




そりゃ…釣り合ってないって思われて当然だけど…。





でも想うのは勝手だろ?











「それよりも…シンは何をあげるか決めたの?」




「…何を?」





「アンタまさか…知らないの?」




「だから何が…」






さんの誕生日、アンタと同じ9月1日なのよ?」




































「結局何が欲しいか言ってくれなかったね…。」






「…さん…」








いつもと変わらないさんの姿。






怒ってる訳じゃないけど…ちょっと悲しそうな顔。





普段は夕食が終わったら割と早くに部屋に入る人なのに。






「お誕生日おめでとう、シン。」





「え…?」





「今、0時になった所。」





腕時計を指差し、さんはニッコリと微笑む。






「あ…ありがとうございます。」





「一番に言えて良かった。」






そんな風に言われたら…俺でも勘違いしそうになる…







さんも…おめでとうございます。

 誕生日…俺と同じ1日なんですよね?」





「あ…うん……… ありがと…」






「あ…迷惑…でした?」




「え?」





おめでとうの言葉を言ったのは間違いなく俺が一番…。




さんは嬉しい表情って言うより…複雑そうな顔…




もしかして…一番に言われたい相手が他に居たんじゃないか?







「その…俺なんかが一番におめでとうなんて言って…」





「あ!そうじゃないの! ただちょっと複雑なだけで…」





「複雑?」





「同じ誕生日だから…ずっと年齢差は2歳のままなんだなぁ…って。」





「え…」





「本当はね、シンと同い年に生まれたかった。」






少し沈んだ瞳…




思い詰めた表情…






「ちゃんと口にした事なかったけど…シンが好きだから…

 だから、平等でありたかったんだと思うの。」





…さん…? 本当に?」





「…からかってたんじゃないのよ?

 少しでも近付きたかっただけなの。」





『私、愛情表現が下手みたいだから…』




はにかんだ笑顔もまた綺麗で…



さんが俺の事を…好き…?







さん! 俺っ…!!」





「シンっ!!ここに居たんだ!?

 お誕生日おめでと〜っ!」





「ちょっとメイリンっ!! 待ちなさいっ!!」






勢い良くラウンジに飛び込んで来たのはホーク姉妹だった。




それを追ってヨウランとヴィーノが…










「メイリン…酔ってる?」




「あ〜 さんっ! さんもおめでとうございますぅ〜!!」





「ちょっと一口飲ませただけなんですけど…」















『悪い…邪魔した?』




『別に…』









「ね! お祝いしましょ〜♪」





「え…ちょっ…」





メイリンの手はしっかりとさんの腕を捕らえて…




強引に外に連れ出そうとする。









それに逆らう事無くさんは引かれて歩いて…















「えっ…?」





「あ…あの…」





気が付けば片方のさんの手を掴んでいた。








「シン〜? どうしたのぉ?」







「メイリン…ごめんね。

 後から行くから、先に行っててくれる?」






「…じゃあヨウラン達の部屋で待ってますねぇ〜。」
























「シン? どうしたの?」





「俺………」





言葉が続かない…




『好きだ』って…ただそれだけの言葉なのに…出て来ない。







「一つ…聞いてもいい?」





「…はい…?」




「自惚れて…いい?」





「え?」




「少なくとも、嫌われてはいないかな…って。」






やっぱりさんの笑顔は綺麗だと思った。





美人で気さくで優秀で…




軍の中でも男から人気のある人で…




完全な俺の片想いだと思ってた。










「行こっか。 皆待ってるし。」





フワリと髪を揺らし、彼女は扉へ歩き始める。
























「好きです!」





「え…?」





扉のボタンに手を掛けたその時…






「俺、さんの事が好きです!」




腕を引いて、自分の元へと抱き寄せた。







「シ…ン…」




「好きです…」






























本当は知ってたの。




自惚れとかじゃなくて…




でも、なかなか言葉にしてくれないから…





私だって女だもの。





ちゃんとした言葉を聞かせて欲しいと思うのは当然でしょう?


















「何か…2人きりでいたいかも…」





「…それ、誘ってるんですか?」






「…どうだろうね?」





さん…そういう所、ずるいです。」




「そう?」










「でも…俺も2人で居たいです…。」






















【あとがき】

シンちゃんのお誕生日夢…

2週間以上遅れてしまって申し訳ありませんです。

改めましてお誕生日おめでとうございます。


今回のヒロインは年上設定。

しかもヒロイン視点がほぼ無し…という話にしてみました。

ただ単にヘタレなシンちゃんが書きたかったというか…

大人っぽい素振りをしてるけど、恋する女の子なんだよ?みたいな。

そんなお話にしたかったんですが…ねぇ…

シンちゃんは年上の女の人と付き合ったらいいと思います。

甘えてくれたら最高だなぁ…


では、ここまでお付き合い下さいましてありがとうございました。






2006.9.19 梨惟菜









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