「キラ、お疲れ様!整備先に済ませちゃうね。」
フリーダムのコックピットから降りると、愛しいの姿が一番に目に飛び込んだ。
キラは嬉しさのあまり、顔を綻ばせる。
「うん。いつもありがとう。」
戦闘から戻って来ると一番に自分の機体を整備してくれる彼女。
気が付けばは、キラにとって特別な人。
優先順位
戦闘から戻るといつも一番にフリーダムの整備に行く。
そんな彼女の事を目で追っている自分が居た。
「あのお2人が気になりますの?」
俺の心を見透かした様に声を掛けて来たのは元婚約者のラクス。
「ラクスは・・・気にならない?」
「・・・ならない・・・と言ったら嘘になりますわね。
でも、キラの気持ちは何となく気付いてましたから。」
と居る時のキラはすごく幸せそうで・・・
彼女が機体の整備をしている間も決して彼女の側を離れない。
キラがに片想いをしている事なんて一目瞭然だ。
そんな2人の光景を見て、深く溜息をついた。
「はい。これで大丈夫だと思うから。チェックしといてね。
おかしい所があったらまた言って。後で見に来るから。」
「うん。ありがとう。」
は自分専用の道具をまとめてフリーダムの前から去って行った。
そんな彼女の後姿を見送りながら、キラは嬉しそうに微笑んだ。
「アスラン、遅くなってごめんなさい。」
フリーダムの整備が終わったら次はジャスティス。
の担当はこの2機だけ。
その分、他の機体よりも厄介な構造なのだけれど。
「あぁ。済まない。」
アスランに微笑みかけたはパソコンを開いて機体の損傷をチェックし始めた。
綺麗な指先が滑らかな動きでキーボード音を奏でる。
そんな彼女に思わず魅入ってしまうアスラン。
『触れたいな・・・』
心の中でそう思ったけれど、
にはキラが居る・・・。
そんな思いが駆け巡り、ゆっくりとコックピットへと向かった。
「ふぅ・・・。」
額に滲んだ汗を拭い、はコックピットを見上げた。
「アスラ〜ン!調子、どう?」
上に居る筈のアスランに声を掛けるが返事が無い・・・。
「・・・?」
不思議に思ったは床を蹴ってコックピットへと向かった。
「アスラン・・・?」
解放されたままのコックピットを覗き込むと、
スースーと寝息を立てて眠るアスランの姿が目に飛び込んだ。
「・・・寝ちゃってる・・・。」
そりゃ、さきまで戦ってたんだもんね。
疲れてて当然かぁ・・・。
「・・・寝顔、可愛い。」
は目を細めて微笑みながら小声で呟いた。
再び下に降りたは、隅にあった毛布を一枚手に取り、
再び上へと戻る。
その毛布を眠っているアスランへそっと掛けてやる。
周囲に人の気配が無いのを確認したは、
そっとアスランの額に唇を寄せた。
唇を離したは頬を真っ赤に染め、
慌ててその場を離れて行った・・・。
今のは・・・何だ・・・?
が去ったコックピット・・・。
すぐさま起き上がったアスランは顔を真っ赤に染め、
今、自分の身に起こった出来事を思い返す。
どう考えても俺の額にの唇が・・・。
落ち着け・・・冷静になるんだ・・・
自分にそう言い聞かせても、先程の感触が鮮明に蘇って・・・
は何で・・・俺にあんな事を・・・?
いつも戦闘が終わって戻って来ると、彼女は必ず真っ先にキラの機体を整備する。
俺はいつも2番目・・・。
そんなの、キラが1番だから・・・。
普通だったらそう思うに決まってる。
キラだって、そう思うに決まってる・・・。
だから俺は、とキラは両想いなんだと思ってた。
でも・・・!!
アスランは急いで格納庫を飛び出した。
一方、はまだ火照る頬を押さえながら自室に戻ろうとしていた。
「・・・?」
偶然通り掛ったキラがに声を掛けた。
「顔、赤いよ?何かあった?」
心配そうにの顔を覗き込むキラ。
「・・・な、何でもないよ・・・。」
アスランの寝込みを襲って額にキスしましたなんて言える筈も無く、
はより一層、真っ赤になって俯いた。
そんなの様子に、キラも不思議そうな顔をする。
「っ!!」
「ア・・・アスラン!?」
珍しく必死な表情で現れたアスラン。
その様子にキラも目を丸くした。
「さっきの・・・どういう事だ!?」
「え・・・まさか・・・起きて・・・!?」
詰め寄るアスランにうろたえる。
2人の間に何があったのかサッパリ分からないキラには状況が飲み込めていない。
「ご・・・ごめんなさいっ!!
あまりにも可愛い寝顔だったからつい・・・出来心でっ!!」
「可愛かったらは誰にでもキスするのか!?」
・・・キス!?
もはや、2人の間に割って入る事も出来ないキラは、
その単語に驚愕した。
「違っ・・・アスランが好きだからついしちゃったの!!」
「・・・え・・・?」
今、何て言った・・・?
俺を好き・・・?
「・・・一つ、聞いていいか?」
「な・・・何?」
「が好きなのはキラなんじゃないのか?」
「え?何言ってるのよ・・・。」
「だって、いつも機体の整備はキラが一番だろ?」
「そ・・・それは・・・。」
アスランの質問にが赤くなって言葉を濁す。
「だって・・・後回しにした方がアスランと一緒にいられる時間が長いかな・・・って。
あ、だからって、キラの整備を手抜きしてる訳じゃないのよ?
・・・ってキラ・・・?」
気が付いた時には既にキラは居なかった・・・。
そりゃ・・・ショックだろ・・・。
アスランはキラに同情しつつも、嬉しさのあまり、をギュッと抱き締めた。
「え!?アスラン!?」
「俺、はキラが好きなんだってずっと勘違いして妬いてたんだけど?」
「え・・・!?それって・・・」
「俺も、と同じ気持ちって事。」
「でも・・・普通の男だったら勘違いするぞ?」
「え・・・?」
「一番に自分の所に来てくれたら嬉しいから・・・。
だから、今度からは俺の所に一番に来て欲しいんだけどな。」
「・・・うん。」
<<おまけ>>
「はぁ・・・僕の勘違いだったんだ・・・。
告白しなくて良かった・・・。」
も酷な事するなぁ・・・
一番に来てくれたら普通勘違いするよ・・・。
【あとがき】
アスランVSキラのアス落ち。
いや、普通に考えれば誰だってそう思いますよね?
ヒロインめ・・・
ちょっと天然っぽくしたかったんですよ。
VSモノって難しいですね・・・。
黒キャラはあまり書かない主義なので考えちゃいます。
この度リクして下さった月乃ユカ様、
お初ですねw
ありがとうございましたw
こんなんで気に入っていただけましたでしょうか・・・??
また感想いただけると嬉しいです。
2005.2.26 梨惟菜